スカパー!公認番組ガイド誌『月刊スカパー!』(ぴあ発行)のスポーツ(バトル)では、サムライTVにて解説を務める鈴木健.txt氏が毎月旬なゲスト選手を招き、インタビュー形式で連載中の「鈴木健.txtの場外乱闘」が掲載されています。現在発売中の2019年12月号には、第70回ゲストとして全日本プロレスのジェイク・リー&野村直矢選手が登場。誌面では惜しくも載せられなかった部分を含めて大公開!!
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体格がアドバンテージを占める中、
闘い方次第で感動を与えられる。
それを青木さんから学びました
ジェイク・リー
野村直矢
(全日本プロレス)
©オールジャパン・プロレスリング/FIGHTING TV サムライ/カメラマン:中原義史
ニガい思い出でしかない
ジェイクの初出場準優勝
野村選手はファンの頃に世界最強タッグ決定リーグ戦を見ていたと思われますが、思い出に残っているチームはありますか。
野村 自分が見て一番印象に残っているのは鈴木みのるさんと太陽ケアさんのGURENTAIです。ほかのチームにないような動きだったり、大きい選手が揃っている中でタッグはこう闘うんだという醍醐味を感じた記憶があります。
ジェイク 僕はプロレスを見て育ったわけではなかったので、再デビューした時に昔の映像から見るようにしていたんですけど、僕に“ジェイク”というリングネームをつけてくださった方が「ファンクス(ドリー・ファンクJr&テリー・ファンク)の試合を見た方がいいよ」と言うので見ました。ひとことや二言で言い表せないものがありますよね。今もけっこう見て、参考にしています。
野村選手は2015年に初めて出場した時はどんな思いで世界最強タッグリーグ戦というものに臨みましたか。
野村 パートナーの青柳優馬選手と大袈裟にいうと命懸けでやっていたという印象ですね。ただただ一戦一戦をガムシャラにいくしかなかった。
ジェイク選手は翌年に初出場で宮原健斗選手と準優勝を果たしています。
ジェイク じつは今、思い出に残っているチームを聞かれてファンクスかGET WILD(その年の優勝チーム)かで悩んだんですけど。初出場準優勝って輝かしい戦績に見えますけど、やっぱり1番と2番とでは全然違うんです。僕はニガい思い出ですね。当時から健斗さんは三冠を巻いていて、優勝できればタッグとの5冠王になれて僕もあのキャリアで世界タッグ王者になれたかもしれないのに…という悔しさしか残っていないです。
そんなお二人が今回、タッグを組んで出場します。
野村 僕はNEXTREAMを脱退したあとは一人でどこにも属さずやっていたんですけど、その中でけっこうジェイク選手と組む機会が増えてきて。もともと二人で世界タッグのベルトを獲りながら(ジェイクの負傷により)返上するという悔しい思いをしたので、ジェイク選手はSweeperに所属してはいますけどそういうユニットの垣根を越えて、元世界タッグチャンピオンとして負けて手放したわけではないので、組んでもう一度ベルトをという気持ちになりました。
ジェイク ユニット云々の前に、自分のケガがもとで返上しなければならなかったことがものすごく申し訳なくて。僕自身も歯がゆい思いを引きずっていた中で先にNEXTREAMを抜けて…ハッキリ言ってグチャグチャですよね。僕の都合だけで動いていた。でも、ずっと野村直矢というプロレスラーの爆発力や底力を認めていたし、それにもかかわらずNEXTREAMを抜けてまでほしいものがあるんだなと思って見るうちにもったいないという感じがしてきて、今ここで二人が組んだらどんな化学反応が起こるんだろうというのが僕の中で気になっていた部分でもあったんです。そこはSweeperのメンバーには申し訳ないんですけど、僕だったら野村直矢の力をもっともっと引き出せるし、僕自身の力も引き出せたら最高なんじゃないかなと。今のままの状態が続くのであれば、自分から打開してどんどんいろんな刺激を団体に持っていった方がいいと思って。それはSweeperのメンバーにも言えることで、仲良しこよしでやっているわけじゃないですから。
NEXTREAM時代に組んでいた時との変化はどんなところにあると思われますか。
野村 前に組んでいた時よりも個々の力は全然違うものだと思うんですけど、7月に世界タッグへ挑戦した時は暴走大巨人(諏訪魔&石川修司)のチーム力との差が天と地ほどあるように感じました。やっぱりタッグは個々の力も大切ですけどチーム力を高めなければと思ったんで、そこをどれだけ伸ばせるかだと思います。
ジェイク 過去の僕らと比べたら今の方が遥かに強いとは思いますけど、こういう時にはこういうことをやってくれたらなというのはお互い熟成されていない気がします。その点においては、アジアタッグのパートナー・岩本(煌史)選手の方が熟成されている。タッグリーグとなると連戦が続いて、お互いの阿吽の呼吸が重視されるんでそこをどういうふうに自分たちの中で熟成させていくか。今回のテーマはそこですね。
リーグ戦の中で高めていける感触はあると。
ジェイク 野村さんはどちらかというと、言葉を交えて信頼関係を作りあげるタイプではないんで。闘っていく中でこうしたいのか、ああしたいんだなというのをつかんでいく。どちらかというと天才型なんです。そのひらめきに対して僕が対応できるかどうかであって、野村さんは野村さんで僕の動きに対してこういうふうにした方がいいというのが生まれるはずなんで。その中でもしかすると衝突があるかもしれないけど、野村直矢というプレイヤーの力をどれだけ引き伸ばして、その上で僕自身の力をどれだけ引き伸ばすか。ひとことで言うなら構築、ですね。チーム力と野村選手が言いましたけど、その点について僕らはまだまだなんですよ。みんな自信があるからエントリーしていると思うんですけど、僕らは個々の力には自信がありますよ。だけどチーム力に関してはまだまだ未熟だと思っているので、そこを構築していって最終的にどう仕上がっていて、その時の戦績がどうなっているのか。構築するスピードが速ければ速いほど白星が重なるので、必然的に優勝が近づいてくるでしょう。ただ、それがうまくマッチアップできなければ黒星だけが重なる。
意気込みだけでなく冷静に自己分析されているんですね。
ジェイク その個々の力とチーム力の違いというものを、7月の世界タッグ挑戦で嫌というほど思い知らされているので。そこから大きな変化が何かあったかと言っても特にない。一緒に練習するぐらいで、まだまだ足りない部分が多いんです。たまに噛み合った時にすごいことになるのはわかっているんで、そのたまにというのを常時出せるか。
先ほど名前が出たGET WILDも個々の力はあってもチームとしては噛み合わないところからスタートしたタッグでした。
ジェイク いろんな意味でGET WILDは奇跡的なチームだったんだと思いますよ。二人とも天才型ですよ。いろいろなものが噛み合って…ああ、こういうのこそがプロレスだよなあって思うし。
野村はSweeperに
入らないのではなく入れない!?
リーグ戦でマークしているチームは? TAJIRI&KAIのようなクセ者チームもいますが。
ジェイク クセ者という点ではTAJIRI&KAI以上に吉田隆司&ギアニー・ヴァレッタ組。僕の中ではTAJIRI&KAIはクセ者のひとことでは表せないチームなんです。アジアタッグでも闘いましたけど、一番プロレスを愛しているチームかもしれない。プロレスを愛する中で自分たちをどう見せていくか。一番研究熱心なチームですね。デカいやつらばかりの中で、何でお客様を魅了しているのかといったら、デカい相手を研究した上での動きであったり、それでいて相手が小柄でスピーディーであっても対策をしっかりと練る。オールマイティなんですよ。どの階級でも通用する。
吉田選手とはお二人ともチャンピオン・カーニバルの公式戦で対戦しました。
野村 巧い選手だと思いました。お客さんの気持ちの乗せ方とかも。ところどころで自分のペースに持っていくんですよね。僕は暴走大巨人に勝たないと優勝はないと思っています。あとは宮原&青柳組には絶対負けたくない。
昨年優勝チームのジョー・ドーリング&ディラン・ジェイムスやThe Endのような自分たちよりも体が大きなチームに対する対策は?
ジェイク 僕はハイキックにしてもヒザにしても一撃で戦況を変えられるものがあるので、それをタッグマッチの中でどういうふうに生かせるかですね。チームとしては自分たちが耐える側になると思います。僕も野村さんも一発で流れを変えるようなカウンターが得意なんで、耐えて耐えてあせらずにその瞬間を見極めること。僕らはそうふうに育ってきているんで。やっぱりそこは全日本という受けを重んじられる中でやってきましたからね。
育ってきたという点に関しては、やはり青木篤志さんの存在が大きかったと思われます。
野村 プロレスに関して教わったことの全部が青木さんです。どういうやり方をすれば自分の気持ちがお客さんに伝わるかも、技術的な面も、私生活における挨拶の仕方も。
ジェイク 「常に工夫して考えなさい」のひとことです。青木さんは身長が高いわけではなくて「俺はプロレスラーになりたかったけど、諦めて自衛隊にいった。それでも夢を捨てきれなくてノアに入ってプロレスラーになった」という話を聞いて、プロレスラーにとって体格がアドバンテージを占める中で、それでも闘い方次第でお客様に感動を与えることができることを青木さんから学びました。「おまえにはその身長があるんだから、俺とは違うやり方もあるはず。そこは俺が伝えられない部分だから、おまえ自身が研究しなければいけない」って常に言われていました。僕も野村さんも基本的なことを教わってはいたんですけど、僕はそういう言葉をたくさんいただきました。それらはずっと忘れないだろうし、この言葉を胸にずっと生きていくんだと思います。
今年はお二人とも宮原選手を通じてのタイトルマッチやリーグ戦、トーナメントにおける大きな闘いが続きました。
野村 プロレスラーとして自分が見てきた中で、完ぺきな人だなと思います。
ジェイク えっ、そこまで称えちゃう?
野村 何もかもがすごいと思って。過程というか、前哨戦の持っていき方ひとつをとっても…。
ジェイク もっと言っちゃいなよ、野村さん。あっ、褒める方じゃなくて。
また、お二人はチャンピオン・カーニバルの公式戦や優勝戦進出者決定戦で対戦もしました。
野村 その試合の前からも、対戦したら絶対出し切る試合になっていたんです。チャンピオン・カーニバルでは1勝1敗だったんですけど、優勝戦進出者決定戦では負けて本当に悔しい思いをした。でも、またタッグを組めば大きいものにできるだろうなとは思いましたね。
新人の頃から二人で組めばいいモノになるというような手応えはお互いあったんですか。
ジェイク 僕はまったくなかったですけど、お互い格闘技好きでサッカー好き。
野村 えっ、そうだったんですか?
ジェイク そうだったんですかじゃないですよ! 小学生の頃やっていましたから。
それでは最後に、このタッグリーグを通じて、さらには全日本でプロレスを続けていく中で見る側に伝えていきたいことをお話ください。
野村 プロレス界における代表的なチームにしていきたいです。全日本のタッグチームっていったら、野村&ジェイクだよなとファンの皆さんから声があがるようなチームにできたらなと思います。
ジェイク 年内最後の公式戦、パートナーの大切さが見ている方々に伝わってくれたらなと。プロレスだけじゃなく私生活のパートナーにおいても「この人がいるからこうなれたんだな、自分がいるんだな」というものを、自分一人だけじゃないという闘いを見せられたらと思います。
ちなみになぜ野村選手はSweeperに入らないんですか。
ジェイク その理由は簡単です。彼がきれい好きじゃないからです。Sweeperって掃除するとか片づけるという意味なんですけど、もともとそういう人間の集まりなんです。
野村 だから必然的に入れないんです。