鈴木健.txt/場外乱闘 番外編

スカパー!公認番組ガイド誌『月刊スカパー!』(ぴあ発行)のスポーツ(バトル)では、サムライTVにて解説を務める鈴木健.txt氏が毎月旬なゲスト選手を招き、インタビュー形式で連載中の「鈴木健.txt/場外乱闘」が掲載されています。現在発売中の2015年8月号には、第23回ゲストとしてDDT&新日本プロレス2団体所属・飯伏幸太選手が登場。誌面では惜しくも載せられなかった部分を含めて大公開!!

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※鈴木健.txt氏 twitter:@yaroutxt facebook:facebook.com/Kensuzukitxt

飯伏幸太(DDT/新日本プロレス)x鈴木健.txt 場外乱闘 番外編

自分のとりあげられ方は
盛られた部分もあるけど
プロレスの入り口に
なるならいいかなと

飯伏幸太(DDT/新日本プロレス)

これまでとは違うやり方で
気持ちをMAXに持っていく賭け

―一昨年に続いてG1クライマックスの連戦から1週間でDDT両国国技館という夏になります。

飯伏 一年間が1月のドームと、G1にDDTの両国と半年サイクルで2回山が来るような感覚ですね。そこに向けて気持ちを持っていかないとズレてくる。

―ズレてくる?

飯伏 3月、4月とか9月、10月に別の山があるといろいろと狂いますね。

―……あのー、3月、4月に山がありましたよね(ニュージャパンカップ優勝とIWGPヘビー級王座挑戦)。

飯伏 ええ、ありました。だから今、狂ってるんですよ。まずいんです。今年はずっと山なんです。1月のドーム、2月のさいたまスーパーアリーナからずっと続いているという。

―それは、自分の中でテンションやモチベーションは持続させられているんですか。

飯伏 また新しいパターンが来たなという認識ですかね。今までになかった…これがたぶん、棚橋(弘至)さんとかのパターンなんだなと。

―ああ、年間通じてずっと上のステージを維持しているクラスの。

飯伏 そうです、そうです。近づいてきたかなと。

―シンドくないですか。

飯伏 シンドいです。

―……。

飯伏 アハハハ。

―笑うしかないぐらいに。

飯伏 シンドすぎますよ。肉体も精神的にも同時に来てますね。少しずつどこか痛めているし。昔よりもハードになったからなのか、試合数が多くなったからなのかわからないんですけど、昔の故障なのか今やった故障なのかもわからないんですよ。少しずつゆがみというか、ズレが…5年前にやったケガが今来たりしているんで、どれがいつのなのかもわからない。

―肉体的なものに関しては、見ている分にはまったく感じさせないですよ。

飯伏 そのへんは出さないようにしています。精神面に関してはアレですね。DDT、新日本プロレスとオスカーと3団体あるんで、そこはやっぱりシンドい。

―表向きは2団体所属と言われていますが、じっさいは…。

飯伏 いやー、3団体所属ですね、これは。仕事量的にはもはや3団体。1カ月のスケジュール表を見ると、なんだかんだでオスカーが一番多いかも。基本、重ならなければオスカーに来た仕事も断らないんで。

―ここ最近で急激に露出が増えましたもんね。

飯伏 あれはいいことなんですよ。たとえキツくても。棚橋さんはもっとやっているわけですから。ただ、ふと戦闘モードに切り替えるのが難しくなる時があるんです。穏やかになりすぎてしまって、そこからなかなか戻せない。たとえば子供を見ていると、純粋にかわいいなあって思っていくらでも見ていられるんですけど、そのまま明日が試合だっていっても戻れないんですよ。

―子供を見る時のような気持ちのまま試合に出てしまうと。無意識のうちに癒しを求めてしまっているんですかね。

飯伏 そうなんですかねえ。その幅が広がるほど、戻れなくなりそうな。だからいくところまで走り続けるしかないんでしょうね。

―G1の連戦から1週間空けてのDDT両国というのは一度経験しているという点で、不安はないと思っていました。

飯伏 不安でいったら、それよりもG1の日程の多さです。

―史上最長の19大会ですね。

飯伏 僕は19大会あるシリーズの経験がないですから。

―DDTはいわゆるシリーズの興行形態ではなかったですからね。

飯伏 今年も全部乗り切られれば、2週間で両国4回(新日本3回&DDT1回)でおととしと同じ(その時は新日本2回&DDT2回)。でも、あの時よりもキツいと思いますよ。配分はなんとなくわかったんですけど、今回はまた違うと思いますし。前回は最初から全部全力でいった結果…失敗しました。

―中盤から連敗してしまいました。

飯伏 そこは学べたんですけど、気持ちをどこまで維持できるか。僕は通常、1カ月前からそこに向けて気持ちをMAXに向けていくんですけど、今回はシリーズが長いからまだ上げていない。たぶん開幕の2週間前ぐらいから上げれば(最終戦に)ちょうどいいんじゃないかと。これは賭けです、やったことないですから。失敗したらG1もDDTの両国も失敗するでしょう。最終的に頼りになるのは、自分の勘です。

―ただ、今年はニュージャパンカップ優勝、両国のメインでIWGPヘビー級挑戦と培ってきたものがあるので、その経験は生かせるのでは。

飯伏 あー、それは前回と違いますよね。対ヘビー級という意味ではおととしよりも慣れてきています。前回はヘビー級とのシングルマッチが続くこと自体初体験でしたから。

―G1でシングルの連戦をやったあと、1週間置いてDDTの両国…いったん燃え尽きたりしなかったんですか。

飯伏 なんとかなりました。それは、今回よりもG1の日程が短かったから。1週間で回復できたんですけど、今回は長いんでわからないです。もしかすると燃え尽きた状態でDDTの両国を迎える可能性はあります。

両国でタッグ戦がいいと思ったのは
シングルより好きなことができるから

―今年は佐々木大輔選手と組み、大日本プロレスの関本大介&岡林裕二組が保持するKO-Dタッグ王座に挑戦します。これまではシングルのビッグカードが組まれてきました。

飯伏 今年はタッグか6人タッグ(のタイトルマッチ)がいいなと思っていたんです。ゴールデンストームライダースとしてベルトを…1人でやるよりも2人か3人でやった方がより自分の好きなことができるんで。

―それはシングルでやる時よりも、自分のやりたいことをやるという目論みですか。

飯伏 自分の中では、DDTではより楽しいことをと思っているんで。振り切ります、はい。

―確かに去年の近藤修司戦、一昨年のオカダ・カズチカ戦と勝負論が最優先されました。本来のDDTにおける飯伏幸太は勝敗を度外視したハチャメチャなプロレスを見せることでもあります。

飯伏 それが求められていると思うんで。DDTの勢いも年々上がっているし、このまま東京ドームへいければいいですよね。

―2012年の日本武道館大会で高木三四郎大社長がブチあげた「5年後に東京ドームへ進出する」ですね。もう2年後に迫りました。

飯伏 このまま上がっていけばできると思います。そのためにはプロレスを知らない人にもっとプロレスを知ってもらわなければならない。シンドくてもできるだけ露出しているのもそのためです。確実に増えている手応えもあります。

―自分のやっていることが実になっているという実感があるのは、いいことですね。

飯伏 それが今の自分にとってのモチベーションです。ただ、まだまだ足りないんで。一度もプロレスを見ないで死んでいく人たちがいると思うんで。そういう人たちに一回でも見るきっかけを作りたい。

―全人口の何割ぐらいがプロレスを見るようになればいいと思いますか。

飯伏 (即答で)日本の国民の10割ですね。全員。そのためならなんでもやります。たとえばテレビに出させていただく時は少しでも“プロレス”という単語を言うようにしたり、私服ではなくコスチュームで出るようにしたり。現場で実感するのは、プロレスは知っていても今ではないんです。

―まだプロレス=ジャイアント馬場さん、アントニオ猪木さんという感覚?

飯伏 そこで止まっています。こっち側にいると今、プロレス来ているって見えるんですけど、いざ外に出ると昔のままなんだなって。

―どの番組に出ても飯伏幸太というプロレスラーがいかに狂っているかとか、変わっているとか、そういうとりあげられ方をされますよね。本人的にはどうなんでしょう。

飯伏 それも、入り口になればいいとは思います。

―世間から変人として認識されるわけですが。

飯伏 なんというか、若干盛られた部分はありますよ。そこはちょっとえっ?ってなりますけど、そっちの方が引っかかりはあるわけですから、いいです。

―33年間生きてきて、自分の人生の中で今、来ているという実感はありますか。

飯伏 それを言うなら二十歳の時に今が人生におけるピークだなって思いました。もっと言えば中3の時にも高校の時にもこれがピークだなって思いました。それが30を過ぎても、まだピークがあったんだなって感じがずっと続いています。

―中3時に訪れた人生のピークとは?

飯伏 体が思った通りに動いたんですよ。それで「俺は最強だな」って思えたんです。

―中3で最強っていうのは早いですね。

飯伏 でも、まだまだ上があったと。二十歳の頃はもっと体が動いてまたピークかなと思った。そういう体のピークから途中で知名度とかの部分でのピークに変わってきて、そっち方面でもまだ上があるからいけるなと。まだ僕は大丈夫です。