スカパー!公認番組ガイド誌『月刊スカパー!』(ぴあ発行)のスポーツ(バトル)コーナーでは、毎月旬なゲスト選手を招き、インタビューが掲載されています。現在発売中の2016年4月号には、大日本プロレスのBJW認定世界ストロングヘビー級王者・岡林裕二選手が登場。誌面では惜しくも載せられなかった部分を含めて大公開!!
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※鈴木健.txt氏 twitter:@yaroutxt facebook:facebook.com/Kensuzukitxt
ベルトを保持することで
経験値を高められるのが
チャンピオンの強み
岡林裕二(大日本プロレス)
河上と和樹が復帰するまでは
何がなんでも防衛しなければ
―岡林選手にとって、シングルのリーグ戦である「一騎当千」はどんな位置づけですか。
岡林 4月って学校の始まりじゃないですか。
―はい。
岡林 僕の感覚では3月、4月が一年のスタートなんですよ。なので、この一騎当千でどれだけ自分をアピールして、スタートダッシュになる結果を残せるかという意識がありますね。
―ああ、大日本プロレスは毎年、年末年始にかけて試合数が多く間がないから、それがひと段落する3月から新たな年という感覚になるのはわかる気がします。
岡林 その通りです。年末から年越しプロレスがあって、年が明けたら1月2日からもう始まって…今年はそれに加えて元日からZERO1さんに出ましたから。あまり新年を迎えたという感じじゃないんですよ。でも、リーグ戦が開幕するとなればそこで別の流れになるじゃないですか。だから、そこがスタートラインっていう位置づけですね。
―リーグ戦開催中はシングルマッチが続くわけですが、それは得意な方ですか。
岡林 僕はシングルがバーッと続いた方がやりやすいです。タッグマッチの方が疲れないように思われていますけど、シングルとタッグでは感覚が別モノなんです。単純に出番が多いからシングルの方が疲れるっていうのは、僕の場合ないです。プロレスはタッグマッチの方がシングルよりも多くなるんですけど、そこではやっぱりずっと力を入れているわけではなく、抜くところは抜いてスタミナの消耗を抑えるんです。その感覚が普通だから、最初のうちは確かにキツいんですけど、戻ってしまえば僕はシングルが続いた方が勢いにノレるというか。
―プロレス経験がない者としては、一口に勢いといっても体を使うわけですからその感覚でやれるのはすごいことだと思います。ましてや大日本の場合は巡業もすれば自分でトラックを運転もするし、それ以外に営業もこなしているわけじゃないですか。
岡林 それは練習しているんで、大丈夫です。
―練習って…巡業や運転の練習ではないですよね。
岡林 そういうのにも耐えられるぐらいに道場で体力をつけているということですよ。試合だけでなく、すべての仕事が円滑に回るために、バーベルを挙げていますから。
―巡業で疲れないため、トラックを運転できるため、営業のために練習を積んでいるというのはなかなかの発想です。
岡林 ウチはみんなそういう試合以外のこともやっていますから、みんな同じ気持ちで練習していると思いますよ。だから、別にシングルが続こうがタッグが続こうが変わらんですよ。
―今、道場の練習ではデッドリフトで何kg挙げているんですか。
岡林 300ピッサリいきました。
―ついに300kg台に。それって日本記録ですよね。
岡林 それがですね、全日本プロレスのゼウス選手が「俺の方がもっと挙げてとるで」って言うんです。312.5kgを挙げたと。
―12.5kgの差というのは大きいんですか。
岡林 かなり大きいです。たった12.5って思うでしょうけど、これがじっさいに挙げるとなると全然違うんです。だからね、320kg挙げてやろうと。
―320kg挙げるにはどうしたらいいんですか。
岡林 とにかくデッドリフトを続けるしかないですね。
―今回の一騎当千は初めてチャンピオンとして臨むシチュエーションです。そのへんで気持ちの違いはありますか。
岡林 そこは気にしないようにしています。チャンピオンなんだから、チャンピオンらしく闘わなければいけないとか思ったら、受けて立つみたいになるじゃないですか。そんな姿勢でやって勝てるような相手じゃないですよ。2メートル近い選手(石川修司、鈴木秀樹)や体重が225kgある選手(浜亮太)がいますから。
―300kgのバーベルを挙げることができても、225kgの人間は挙げられないものなんですね。
岡林 人間は持ちにくいですから。ブレーンバスターの方が挙げやすい。だから浜選手も持っていけましたけど、ボディースラムはいまだに決められない。そんなのを相手にして「さあ、どこからでもかかってきなさい!」なんて言えるわけがないですよね。だから、チャンピオンであることを抜きにして、それよりも自分らしくガムシャラにいかないとと思っています。(力士出身の)浜選手に勝ったあと、大日本の横綱になると言いましたけど、僕の場合はどっしり構えるのではなく、ガムシャラ横綱です。
―タイトルホルダーがリーグ戦に出ると「すべての公式戦が防衛戦だと思って」と受け取る選手もいますが、そうではないと。
岡林 もともと僕は、そんな受けて立つなんて気持ちで試合することなんてなかったし、チャンピオンらしくといってもまだ2回しか防衛戦をやっていないので、自分なりの王者像も築けていないですから。
―7月の両国で獲って、初防衛戦が2015年ギリギリの12月20日でした。
岡林 だから、チャンピオンになったからってシングルが増えたわけでもなかった。本当はもっと防衛戦をやりたかったですけど、最初の防衛戦が河上(隆一)のケガで流れちゃって…。
―それでも周囲は「チャンピオンだから優勝」という見方をするでしょうね。
岡林 そこには応えなければならないと思います。まだ優勝したこともないし。
―他の選手ならば、リーグ戦に優勝してそれを足がかりに次はベルトを狙うとなるわけですが…。
岡林 そこは別モノとしてとらえています。リーグ戦はリーグ戦で優勝という目標が持てるし、それが終われば今度はベルトを防衛するっていう別の目標を持てる。ベルトを獲った当初、大日本の自分と近い世代の相手とベルトを懸けてやりたいって言ったんです。河上、橋本和樹、神谷英慶…でも、まだ神谷としか実現していないんで、一騎当千が終わったらそれをひとつずつ実現させていきたいっていう思いがあります。
―ただ河上選手も橋本選手も欠場しているので、現実的には他団体勢やフリーの選手の方が先になりそうですね。
岡林 でしょうね。だから、あの2人が復帰するまでそういう人たちとやって防衛しないといけないんですよ。これはもう、何がなんでもですよ。河上は7月までかかりそうだし、橋本もその前ぐらいまでかかるようなので。
―今年に入り所属となった橋本大地選手はどうでしょうか。
岡林 本音を言うと、タイトルマッチに関してはあまりピンと来なかったんです。やっぱり河上や和樹に対する思い入れが強かったんで。でも、この間(2・18後楽園ホール)蹴り食らってKOされたんで、意識せざるを得なくなりました。やっぱり、すごい蹴りを持っていますよ。
―リーグ戦のシングル連戦が終わったあとも、それこそ月イチぐらいでタイトルマッチをやっていいぐらい相手には恵まれています。
岡林 自分はもう、シングルいっぱいやりたいんでその方が願ったりかなったりですよ。本当はタッグマッチの方が好きなんです。数的にいっぱいやっていますから。ただ、シングルも増やしていって極めたいんですよね。シングルが巧い人は巧いじゃないですか。昔の人でいえばリック・フレアーとかハーリー・レイスとか、ニック・ボックウィンクルとか。ああいう選手のように…。
―……。
岡林 ……あっ、いや、スタイルは全然違いますけどね!
―驚きました。今からああいうスタイルに転身するのかと思いました。
岡林 いやいや、ああいうのも見習わないとなあっていう意味です。
―まあ、巧さを研究するのはいいことです。岡林選手の肉体とパワーで許しを乞うたり狡猾な戦法を見せたりして、妙に試合巧者というのも見てみたいですが。
岡林 さすがにそれはねえ。でもシングルマッチを極めるのであれば、そういう要素も研究しなければ極められないじゃないですか。今の僕は、とにかく力ずくでやっている感じなんで。無心でやったらベルトも獲れたようなもので、計算なんてまったくしていない。
―計算は苦手ですか。
岡林 数字には泣けてきます。
―ハクション大魔王みたいですね。
岡林 でも、ハチャメチャやってその結果、お客さんを置いてきぼりにするのはよくない。
―していないですよ。大丈夫です。
岡林 そうですか(ニッコリ)。計算されたハチャメチャさっていうんですかね…そこにはまだいたっていないと思うんで。
―地力はもちろん上がっていますが、基本的にはデビューの頃から変わらぬスタイルで来ていますよね。
岡林 変わっていないですねー。ただ、これからは相手によっても変わってくるんだと思います。みんながみんな、同じ闘い方でいってうまくいくようなレベルじゃないですから。それぞれの攻略法を考えるうちに、自分の幅が広がっていくんじゃないですかね。スタイルは変わらなくても、デビュー当時と今の映像を見比べると細かい部分での動きはやっぱり違っていますよ。
―そういう意味では、短期間にこれほどの相手とシングルマッチをやることでまた変わっていくでしょう。
岡林 それが成長というものなんでしょうね。
最近のピッサリな出来事は…
「リントラに棚を作ったんです」
―その一騎当千ですが、昨年の「デスマッチサバイバー」に続いて優勝戦が札幌でおこなわれます(4月10日、札幌マルスジム)。
岡林 昨年は札幌テイセンホールでしたけど6月で閉館になって、10月に初めてマルスジムでやったんです。テイセンと比べたらちょっと小さいんですけど、壁までパンパンになって、熱気はテイセンとまったく変わらなかった。僕の中で東京以外の人たちをいかに熱くさせられるかっていうテーマがあるんですけど、その中でも初めて見に来た方にどうやって面白いなーって思ってもらえるか。自分が優勝戦に出ることで、今回も札幌に熱を発生させたいです。
―キッチリと優勝を果たせば、先ほど言われたように今度は防衛戦とスムーズに気持ちを入れ替えられるでしょう。
岡林 一騎当千が終われば、すぐ5月の(横浜)文体ですから。そこはもう、防衛戦をやるつもりでいます。去年から両国でやるようになっても、自分の中では大日本のビッグマッチっていったら文体なんですよ。だから、両国はもちろんですけどその前の文体でもタイトルマッチをやりたいんです。ベルトを保持し続けることで、両国までに経験値を高められるのは大きいですよね。それこそがチャンピオンの強みだろうし。理想のチャンピオン像としては、攻めるだけではなく相手の技を全部しっかりと受け切れる…強いのは当たり前であって、その強さというのも攻める強さだけではないと思うんです。
―受けの強さもあります。
岡林 受けて負けてしまうようじゃ、チャンピオンは務まらないですよ。さっきも言った通り、受けて立とうなんて思ってはやらないですけど自分もガムシャラに向かっていって、相手の技も受ける。それによってお客さんも熱くなれるんだと思うんです。でも僕はまだ、やられて「ああ…このまま3カウント獲られてもしょうがないな」って試合中に思ってしまうことがある。そう思ってしまうのは、まだまだっていうことですよ。このままでいいって思った瞬間、下がっちゃうんで常に上を見ていかなければならない。それはチャンピオンになっても変えてはいけないことだと思うし。
―経験値という言葉が出ましたが、今は全日本プロレスとの交流も活発化し、WRESTLE-1にも参戦しています。他団体に出ることでより幅が広がっていますね。
岡林 ただ出るのではなく、そこに上がるのであればそのベルトも狙いたいですよね。
―わかりました。では最後に最近、これはピッサリだなと思ったことを話してください。
岡林 自分、トラック好きなんですよ。
―走る方ではなくコースが?
岡林 ハッハッハッ! そっちじゃなくて車のトラックです。
―ええっ!? あまりに当たり前で逆にひねって考えてしまいましたよ。
岡林 小学校の時からトラックが好きなんですけど。幼稚園や小学校の時って、だいたい乗り物が好きやないですか。それがずーっと好きなんですよ、33歳になっても。自分でもなんでやろ?っ思うぐらいで。デコトラってわかります?
―装飾がついているトラックのことですか? 完全に『トラック野郎』の世界ですね。
岡林 そう! 小学校2年の時に初めてトラック野郎を見ましたよ。
―小学校低学年でトラック野郎にハマるって…。
岡林 月に一度、レンタルビデオ屋にいけたんですけど、そこでビデオを見つけて「こんなのあるんか!?」って。ちっさい頃はトラックってカッコいいよなあって思って見ていたのが、このトシになっても見ると…人間模様がね。
―人間模様じゃトラックと直接関係ないじゃないですか!
岡林 だからこう…なんていうんですか、すべていいなって。
―トラックを中心とした人間模様。
岡林 それは小学生の時には気づかなかったんで。これは最近というよりは、ずーっとピッサリですね。
―要はトラック野郎という映画の良さがわかったということでよろしいですか。
岡林 それもですけど、それ以外でも見るのが今も好きで。ユーチューブでボロボロの中古車を持ってきて、塗装を全部剥がして塗り直すっていう映像があるんですけど、それがムチャムチャ面白いんですよ。そういう作業が自分も好きで。
―やったことがあるんですか。
岡林 やったことはないです。
―そんなにトラックが好きなら、リングトラックを運転するのは苦でないでしょうねえ。
岡林 苦じゃないですね。この前、運転席の後ろにある寝台の上に、棚を作ったんですよ。
―なんのために?
岡林 そういうのが好きなんですけど。収納しやすいように(ニヤニヤ)。
―嬉しそうですね。棚を作ったのがそんなに嬉しいものですか。
岡林 作りたかったんで。それが最近のピッサリですね。