スカパー!公認番組ガイド誌『月刊スカパー!』(ぴあ発行)のスポーツ(バトル)では、サムライTVにて解説を務める鈴木健.txt氏が毎月旬なゲスト選手を招き、インタビュー形式で連載中の「鈴木健.txt/場外乱闘」が掲載されています。現在発売中の2018年2月号には、第50回ゲストとして“暴走大巨人”こと諏訪魔&石川修司の両選手が登場。誌面では惜しくも載せられなかった部分を含めて大公開!!
※『月刊スカパー!』(ぴあ発行)の定期購読お申込はコチラ
※鈴木健.txt氏 twitter:@yaroutxt facebook:facebook.com/Kensuzukitxt
「なんだってやれちゃう」
暴走大巨人と一緒に暴走せよ
諏訪魔(全日本プロレス)・石川修司(フリー)
©全日本プロレス/FIGHTING TV サムライ/カメラマン:中原義史
最強タッグリーグ制覇後の バラモン兄弟戦で開眼!?
―タッグ結成直後に世界最強タッグ決定リーグ戦を制し、東京スポーツ紙制定プロレス大賞の最優秀タッグ賞も受賞すると、この上ない形で2017年を終えられると思っていたところ、12月30日にとんでもない体験をすることになってしまいました(バラモン兄弟と対戦し、諏訪魔は墨汁ミストを食らいながら自らも墨汁を口に含んで噴出)。
諏訪魔 いやあ、もうあんな自由にやる人間がプロレス界にいるなんて知らなかったからね。こういう体の張り方もあるんだなと。貴重な経験になりましたよ。
石川 貴重な経験だったんですね。
諏訪魔 そう思いたいよ、こっちは。墨汁を口に入れるなんてやったことないし、あんなのお客さんがいなかったらできなかったよ。シラフじゃできない…って、酔ってたわけじゃないけど。
―これ、石川さんに巻き込まれたって気はしませんでした? 石川さんは嬉しそうにやっていましたよね。
諏訪魔 そういうこと?
石川 いやいや、触れていない人に触れてほしかったっていう気持ちだけですよ。
諏訪魔 あ、そういう狙いがあったの? 今気づいたよ。
石川 あとは諏訪魔&石川組をプロレス界の奥深くまでに広めたいというのがあって、全日本だけでなくインディー方面でも知られるようになったらいいなと思って、DAMNATION主催興行なら組めるんじゃないかなと。
―諏訪魔さんだったら、そうやって場を広げていったらもっと違う面が出せるという確証があったんですね。
石川 怒られる危険性もありましたけどね。また仲間割れをしてしまうかもしれない。
―せっかく最強タッグ決定リーグ戦の最中にギクシャクしたのを修復して優勝したというのに、それほどのリスクを覚悟してでも諏訪魔さんにバラモン兄弟を体感してほしかったと。
石川 はい。結果、ああなったんで。ありがとうございます。ノリノリでやってくれていたし。
諏訪魔 ノリノリじゃないよ! 俺はいつも怒りに震えながら闘っているからね。顔に墨汁をブチまけられたらこっちだって頭に来るよ。
―その怒りをこめてラストライドで叩きつけようとしたところ、別の試合が乱入してきました(アイアンマンヘビーメタル級のベルトを巡りバックステージで続いていた追いかけっこがリング上に移動、ラストライドを狙う諏訪魔の股の下を選手たちが通り過ぎていった)。ああいうシチュエーションも全日本ではあり得ないです。
諏訪魔 だから、あり得ないことが起こった時にも対処できるなって自分自身、思ったよね。
石川 おーっ。僕としてはもっとこういう方面に諏訪魔選手と踏み込みたいっていうのもありますけど、これ以上やったら諏訪魔さん以外から怒られる可能性があるので、やるとしたら年一ぐらいで気づかれない程度にやろうかと思います。でも、いろんなことができるよというのは見せた方がいいですからね。その前に、世界タッグのベルトも獲れたので本道を忘れずにやっていきます。
―最強タッグリーグ戦は最終公式戦で30分近く闘ったあと、同点1位だった橋本大地&神谷英慶組との優勝決定戦に臨まなければなりませんでした。キツい闘いの末の優勝だったわけですが、何よりも優勝戦で石川さんが勝利をあげたところで駆け寄ってきた諏訪魔さんの嬉しそうな顔が印象に残ったんです。
諏訪魔 なんだろうね、最初からうまくはいかなかった分、達成感が大きかったんだと思う。連敗からスタートして途中、誤爆が原因で口喧嘩しちゃって、そういうのを乗り越えて優勝戦まで進んだら、目の前で暴れている石川選手がもう強いわけですよ。自分のパートナーが強いことに感心して、嬉しくなっちゃうような感じ。それが笑顔になって表れていたんだろうね。勝った瞬間、緊張の糸が途切れて笑っちゃった。
―昨秋、シングルのトーナメント「王道トーナメント」に優勝した時も、あるいは過去2回最強タッグリーグに優勝した時もあそこまで大っぴらに喜ぶことはしませんでした。
諏訪魔 最近になって笑えるようになったんですよ。以前の俺だったらどこかでプロレスラーを強く見せなきゃっていう意識が強くて笑った顔を見せないようにしていたところがあったんだけど、最近はそういうのも出し切って楽しくやった方がいいだろうと考えるようになって。
―プロレスラー・諏訪魔に抱かれた男ですよ。
石川 それが残念なことに死力を尽くしていて余裕がなかったんで、その感触を味わえなかったんです。喜びが湧いてくるのに諏訪魔選手と比べてラグがありました。
諏訪魔 優勝の祝勝会もやらないうちにバタバタしちゃったんで、世界タッグ奪取も含めてこれからやりたいよな。
―同世代だからそういう席でも話が合いそうですね。
石川 それが、漫画に関してはまったく違うものを見ていたことがこの間、発覚しました(最強タッグリーグ戦前、週刊プロレス誌に掲載された対談で諏訪魔が『タッチ』を見ていたことが明かされる)。僕はジャンプ派だったんで。
諏訪魔 ジャンプは見てなかったからなー。
―『北斗の拳』も見ていなかったんですか。
諏訪魔 あんまり…気持ち悪かった。俺はマガジンとかサンデーの方がよかった。
―そちらのアクティヴな作品は見なかったんですか。『タッチ』ってソフトじゃないですか。
諏訪魔 『タッチ』が一番の愛読書っていうわけじゃないですよ。記憶に残っていたから名前を出しただけであって。
石川 週プロさんのおかげで、もう諏訪魔=タッチって伝わっちゃいましたよ。
諏訪魔 ったく、迷惑な話だよ。全然、プロレスラーっぽくないじゃん。
石川 いやいや、そのギャップがいいんじゃないですか。
生涯全盛期であるためにタッグ版渕正信を目指す
―ところで、この暴走大巨人は諏訪魔さんの方からタッグ結成を呼びかけることで実現しました。いつぐらいから諏訪魔さんの中で石川修司というプロレスラーの存在がグッと引っかかってきたんですか。
諏訪魔 去年、シングル3試合をやる中で「これは組むべきだ」ってなりましたね。今の全日本って、他団体やフリーの選手がたくさん上がっているじゃないですか。そういう中で所属かどうかっていうことも気にならなくなったし、石川選手はむしろ全日本の選手以上に全日本のプロレスを体現している。そこに俺自身、魅力を感じたんです。
石川 僕が全日本へ上がるようになったのはまだユニオンプロレス所属の頃で、小さい時から見てあこがれていたリングですからほかのリングへ上がる時とは明らかに違う緊張があったんです。だから普通に会話できるようになるまで時間もかかったし、諏訪魔さんとも組むまでは緊張してほとんど話したことがなかったんですけど、それが変わったのはやはり昨年、シングルでやったのが大きかったと思います。リング外での言葉による会話以上に、試合の中で技を出し合って会話できた。そうすると、普段の会話も自然とできるようになるものなんですね。
―プロレスラー同士ならではのコミュニケーション手段です。
石川 その上でタッグを組もうと言われたのは嬉しかったし、何よりも自分自身が最強タッグリーグに優勝したかったから、それなら一番強い人と組むのが一番ですからね。
諏訪魔 石川選手がウチに上がるようになった時点で、俺もいつかは本格的に当たる日がくるだろうと思ったし、周りもそう見ていたみたい。不思議と去年の「チャンピオン・カーニバル」リーグ戦で当たるまで実現しなかったけど、タメていた分、それでよかったんじゃないかって思うし。それでいざ組んでみてもスムーズにうまくいかなかった分、濃密な1ヵ月間を体験できた。常に考えていましたからね、このタッグをどうすればいいかって。
石川 そこは最強タッグリーグ戦の最中だったからっていうのもあったと思います。もういいよ!って投げ出しかけても、優勝したいっていう共通の目的があったから続けられた。あれがリーグ戦ではなく、通常のシリーズ中に仲間割れしていたら今頃僕らは2人でここにいなかったかもしれない。優勝するために組んだんだから、それを実証しなければいけないっていう思いが最後の最後でつないでくれました。
―諏訪魔さんは2015年に最強タッグリーグ戦で、宮原健斗選手と組んで優勝を果たしながら、その場で仲間割れをしてしまうという前例があるだけに、なおさらファンもハラハラしながら見ていたと思われます。
諏訪魔 宮原は生意気だからやっちまっただけだよ。石川選手は価値観的に共通する部分があるから違ったよね。続けられたという意味では、俺の中ではそこが大きかった。やっぱりね、誰もかれもがみんな同じじゃないんですよ。お互いがどういうプロレス観を持っているか。石川選手が言うように、そういうのって言葉によって確認し合うんじゃなくリング上でぶつかり合うことで理解できることだから。性格も人間性も全部リング上に出るものなんですよ。
石川 僕はどんな人間性なんですか。
諏訪魔 いや、素晴らしい!
石川 アッハッハッ。
諏訪魔 俺に足りないモノを持っているなと。タッグに関しても、これまでの自分はここまでのめりこんだことがなかった。今まではあくまでもユニットとしてという方が大きかったけど、石川選手とは純然たるコンビだからね。タッグの面白さを感じているし、まだまだこれがスタートラインだから、ここから新しいものを創っていけるワクワク感も大きい。全日本所属同士のチームではないからこそ、いくらでも幅を広げていけると思うんで、面白い相手がいるんだったら他団体のチームともやっていきたいよね。
石川 世界タッグのベルトを獲ったことで本道においても突き進んでいけると思うし、名実ともに業界ナンバーワンタッグチームとして認められるようになるには、じっさいにいろんな団体のチームとやることによって証明していくのが近道ですから。
諏訪魔 タッグリーグに優勝して最優秀タッグ賞を獲っても俺らはまったくやりきった感がないからね。石川選手が言っているように最優秀タッグ賞も2年、3年と続けて獲れるようにやっていくから。それでこそ何年経っても全盛期。
―「俺たちは全盛期だ」がキャッチフレーズとして定着しました。
諏訪魔 石川選手が全盛期って言い出したもんだから、それを実践していく方としては大変だよ。でも、俺らはタッグ版の渕(正信)さんを目指すから。
石川 あの域に達するのは難しいですよね。
諏訪魔 ああ、俺らなんておこがましいですよ。
石川 渕さんって、渕正信というひとつのブランドじゃないですか。僕らもああなりたいです。渕さんを見習えば、ちゃんと今年もコンディションを整えた上でやっていけると思うので。
諏訪魔 2018年は、面白そうなことをやっているじゃんって思ってもらえることをやっていくんで、そこに参加して一緒に突っ走って、盛り上がってくれたら嬉しいです。
―ほかのお客さんに迷惑をかけぬ範囲で、ファンも一緒に暴走しようと。
諏訪魔 今の俺はもうね、アレ(バラモン兄弟)を経験したら、なんだってやれちゃいますから。
石川 (目がキラーン☆と光る)よろしくお願いします。