スカパー!公認番組ガイド誌『月刊スカパー!』(ぴあ発行)のスポーツ(バトル)では、サムライTVにて解説を務める鈴木健.txt氏が毎月旬なゲスト選手を招き、インタビュー形式で連載中の「鈴木健.txt/場外乱闘」が掲載されています。現在発売中の2018年3月号には、第51回ゲストとしてDDTのKO-D無差別級王者・竹下幸之介選手が本連載2度目の登場。誌面では惜しくも載せられなかった部分を含めて大公開!!
※『月刊スカパー!』(ぴあ発行)の定期購読お申込はコチラ
※鈴木健.txt氏 twitter:@yaroutxt facebook:facebook.com/Kensuzukitxt
茨の道が大好き。
追い込まれることで
エクスタシーが
満たされるんです
竹下幸之介(DDTプロレスリング)
©DDTプロレスリング/FIGHTING TV サムライ/カメラマン:中原義史
1年間、王座を守ってきた
自信と誇りをD王で潰された
―大規模のものとしてはDDT初の試みとなったシングルリーグ戦「D王グランプリ」にKO-D無差別級王者としてエントリーされながら優勝はなりませんでした始まる前、シングル連戦の経験はないのでやってみなければスタミナや疲労がどうなるかわからないと言っていましたが、じっさいどうでしたか。
竹下 非常に体力の配分が難しかったですね。初戦が黒潮“イケメン”二郎戦で、その時は自分のすべてを出し切ろうと思ってやったんですけど、矢先にうまく丸め込まれてしまって早くもスランプに陥ったんです。
―リーグ戦初日でスランプへ! それはまずいですね。
竹下 僕はKO-D無差別級王者としてメインイベントに立つことが多いわけですけど、リーグ戦の最中は公式戦としてシングルマッチがザーッと続くじゃないですか。お客さんは僕が出るまでに何試合もシングルマッチを見続けている。その流れでメインに出るのって通常の興行とまったく違っていたんです。
―いつもならタッグや6人タッグがあって…となりますが、シングルが続くと見る側の感覚が違ってきます。
竹下 その中でリーグ戦に勝つことと、その日の興行で満足して帰ってもらうことの両立が難しかった。疲労とかコンディション維持に関しては考えていても、そこは想定外の課題だったんで。
―リーグ戦とタイトルマッチとの違いは感じましたか。
竹下 タイトルマッチは負けてベルトを失ったら終わりの一発勝負だから、培ってきたものをぶつけるという意識が強いですけど、リーグ戦に関しては途中から逆に試してみたいと思うことを試そうとしていました。もちろん、優勝するために勝つことを第一には置いているんですけど、ほんのちょっとだけ頭の中を両国に向けて切り替えて、そこで爆発させる何かを築き上げようと。
―スランプはどこまで続いたんですか。
竹下 今(1・28後楽園大会直後)も若干続いています。シングルマッチで絶対負けられないっていう試合に負けたのって数年ぶりだったんで。その心のダメージを引きずってはいますね。
―開幕でイケメン選手に敗れたあと、終盤で高梨将弘選手にも不覚を喫したのはその影響があったからですか。
竹下 いや、あれはその試合に懸ける思いの違いが完全に出た試合です。高梨さんとは前に同じ横浜ラジアントホールでやった時にも丸め込みで負けていて(2013年3月10日)、プロレスは3カウントを獲ればいいんだということを思い知らされた試合だったんです。だから警戒はしていたんですけど…なんていうか、僕はどの試合についても負けられないという意識でやっているのに対し、高梨さんはリーグ戦の中でも無差別級チャンピオンとの公式戦に関しては本当、死にモノ狂いでした。そこに僕が怖気づいてしまった部分が少なからずあったと思います。
―チャンピオンとしてリーグ戦優勝を宿命づけられながら、それを果たすことができなかったという現実を自分自身、どう受け止めていますか。
竹下 これはもう、申し訳ないのひとことですね。フタを開けてみると石川修司が優勝という、強い人が勝っているわけで。優勝戦にも残れなかった自分は単に弱かったということだと受け止めています。
―弱いという言葉はどこにも当てはまらないようなことをやってきた竹下選手が?
竹下 タイトルを10回防衛するのって大変ではありましたけど、自分の勝負強さというか運、引きの強い部分もあったんだなってリーグ戦で気づかされました。あとになって振り返ると、あの試合のあの場面は運がよかったんだと思い当たるフシがあって。でもリーグ戦はシングル連戦のトータルですから、安定感や根本的な強さがもっと必要なんだと。
―長丁場というのも含めてそうでしょうね。
竹下 だから結果的に、そういう強さを備えている石川修司が優勝した。場数も違うし、リーグ戦の経験もダントツですから。1年5ヵ月前に両国のメイン(2016年8月28日)で石川さんとやったあとに僕が築いてきたものは濃かったですけど、石川さんが同じ時間の中で築き上げてきたものの大きさを、優勝という結果によって知らされました。
―1・28後楽園の優勝決定戦を本部席より観戦していて、石川選手の強さを目の当たりにしてア然とする顔がヴィジョンにも抜かれていました
竹下 最終公式戦から1週間経っていましたけど、同じプレイヤーとしてそれでも連戦のダメージが抜け切らないのはわかっているわけじゃないですか。にもかかわらず…圧倒的でしたよね。
―それもHARASHIMA選手を相手に圧勝するという。
竹下 僕視点ですけど、HARASHIMAさんが石川さんに勝つと思える瞬間が一秒もなかった。公式戦で自分がHARASHIMAさんと当たった時、去年のさいたまスーパーアリーナの一騎打ちと比べて進化している部分が感じられたんです。それを実感した上であの試合を見せられた。単純にHARASHIMAさんを物差しにして比較対象とすると、完全に僕より石川さんの方が圧倒している。そんな状態で今林久弥APにリング上へ呼ばれてひとことと言われても、パッと出てくる言葉はなかったですね。石川さんから「そのベルトは俺が巻いた方が輝く」と言われて、本音でそうだよなと思ったんでそれがそのまま出ちゃいました。
―相手の言い分を認めてしまいました。
竹下 自分のいいように取り繕うことができなかったという。でも、そのあとに10回防衛してきたという意地で言い返して。1年間、王座を守り続けてこられたのは自信になったし、誇りにもなっています。ただ、その自信と誇りをD王GPによって潰された。プロレス不振に陥りました。プロレスに正解はないんでしょうけど、自分なりに見つけ出した答えを却下されたような気がします。
―1年間、チャンピオンを務めてきて今もベルトを失ったわけではないのに高い壁に当たっているような状況ですね。
竹下 しかもその壁の高さがどこまで上にあるのか、石川さんの場合は見えない。陸上競技にたとえると、棒高跳びのバーが大気圏にあるような感覚です。
―それはセルゲイ・ブブカだって無理ですよ。
竹下 でも、僕の中で両国に向けてやることはもう決まっているんで。もちろんトレーニングの強度とかも上げていきますけど、体力とか技術云々で倒せる相手ではないからそれよりも心の構造を変える必要があるという結論に達しています。
ベストバウトの基準とは?
石川戦で一石を投じたい
―そういうのってできるものなんですか。
竹下 わからないです。でも、2ヵ月弱の中で急激に体力や強さが増すものではないし、技も石川修司相手では付け焼刃でしかないわけで、そこに関しては今まで積み重ねてきたもので勝負した方が現実的ですよね。変えるとしたら、そっちじゃなくメンタルの方だと思うんです。本能とか意地の部分…進化するとかじゃないんですよ。人が変わる、別の人間に生まれ変わる。人格も変えてしまう。
―人格は今のままでいてくださいよ。
竹下 いや、それじゃあ石川修司には勝てないです。試合の時の石川修司と『恋』を歌っている時の石川修司は違うでしょ。あれぐらい二重人格にならないと…まだ僕は試合の時と普段の変化が薄いと思っています。
―ああ、どちらかというと日常の延長線上に試合があって、日常の中で培ってきたものの成果を出していくタイプですよね。
竹下 まあ、僕の場合日常が非日常みたいなものですけど。
―そりゃそうですよ。一般の人から見たら毎日が非日常でしょう。
竹下 だからなのか、ON・OFFを作りづらかった部分がありましたね。でも3月25日を迎える頃には大学を卒業しているんで、生まれ変わってもう一回スタートする気でいかないとなと思っています。
―卒業式はいつなんですか。
竹下 3月10日です。だから2週間後には社会人として両国のリングに上がっています。
―もう学生プロレスラーではないんですね。
竹下 そういうタイミングでもあるんです、両国は。だけど、大学とプロのリングで4年間やってきたものの集大成というよりも、新しい竹下幸之介のスタートラインを見せたいんですよね。
―DDTの両国国技館大会で同一カードがメインになるのは、竹下vs石川戦が初めてです。あのHARASHIMAvs飯伏幸太戦でさえ、2009年(初進出)のみでした。これほど自分のプロレス人生において石川修司の存在が強く絡んでくるというのは、入った当初は描いていなかったすよね。
竹下 前回の負けは、僕の敗戦史上もっとも大きいですね。あれでベルトを3ヵ月で落としてしまった。あそこで勝っていたら、僕のプロレス人生は大きく変わっていたと思うし、挫折はしたことないと思っている僕ですけど、一回心が折れたのがあの試合でしたからね。
―でも、負けたことでそれを糧にして成長できたのでは?
竹下 いや、負けて糧になることなんてないです。よく、そういうふうに言われますけど負けて実になるものなんてない。あったとしたら、あの負けで成長したというより、僕は生まれ変わった…脱皮をしたとは思います。そしてこのD王GPが2回目の脱皮です。ただ、今回は脱皮してからのスパンが短いんで、いいように出るかどうかはわからないです。
―……。
竹下 もうすぐ卒業論文が完成するんですけど、僕はジャーマン・スープレックスを研究していて。その論文通りに石川修司を投げることができれば勝てます。
―石川修司に勝つことで、卒業論文が正しかったと証明すると。
竹下 文献研究という論文の証明は自分の試合でするしかない。それで単位を認めさせると。
―でも、その時点で卒業はしているんですよね。
竹下 そこは先に単位をもらっていて、石川修司に勝てなかったら単位を返納してもう1年大学へいくと。勝てたら卒業…。
―負けたら即留年スペシャル。
竹下 それぐらいの気持ちで、自分の試合で論文が正しいことを証明したいっていうことです。これまで、ジャーマン・スープレックスを論文にしたものはないんで、あくまで自分の経験と研究に基づいた仮説なんですけど、あれほどデカい相手にジャーマン・スープレックスを決めて勝てたらその仮説が実証になるし、こんなに立派な研究結果はないですよ。
―単位10倍のボーナスポイントでもいいですよ。
竹下 この研究に関しては、僕自身のジャーマン・スープレックスの向上も目的ですが、ほかのジャーマンの使い手やこれから使いたいと思っている選手たちにとっての教科書になるようなものを作りたいと思って研究を続けてきたので。完成したらブログにアップしますので、ジャーマン・スープレックスを自分のモノにしたい方は読んでください。正直、プロレスファンの竹下幸之介から見て現在の日本の全団体を通じて一番強いのは石川修司なんです。去年は全日本プロレスで数々の実績をあげましたけど、おそらくどの団体に上がっても同じような結果が出せると思っています。
―本人も一番デカくて強いと公言しています。
竹下 でも、僕はずっとDDTのストロングの部分を打ち出してきて、そのひとつの答えを出せる相手でもある。だって、ほぼ1年の間にチャンピオン・カーニバルと世界最強タッグリーグ戦で優勝して、三冠ヘビー級も世界タッグも獲った人間なんてほかのどこにもいないんですから、これ以上のふさわしい相手はいないでしょう。勝てば僕が前回の両国での対戦からやってきたことは正しかった、負けたら間違っていた。その答えがこれ以上ない形でハッキリと出る。だから…負けたら絶望ですよ。そこでプロレスをやめることはないですけど、デビューから6年やってきたことをすべて否定されると僕は思っている。それほどの覚悟で臨むということです。
―そこまでのリスクを背負ってでも闘わなければならない。
竹下 リスクを負うのを承知で、プロレス界に一石を投じたいという思いもあるんですよね。石川さんとはMAXの試合をします。その結果、それがプロレス大賞とかでどれほど響くのか。ああいったものに選ばれるのは試合内容で見られているのか、それとも認知度で見られているのか。そういう問いかけになるような試合にしたい。それは前々から僕の中に疑問としてあって、その答え合わせをしたかった。ベストバウトの基準とはなんなのか。300人が集まった会場でその場にいた全員が年間でもっとも素晴らしい試合と思ったものと、内容的にはそれと比べると若干落ちるとしても1万人の観衆の前でおこなわれた試合とどちらが選ばれるのか。それが後者だとしたら、たとえば“プロレスを広めた試合で賞”という名前の方がふさわしいかもしれない。
―石川選手と、ベストバウトを意識した試合をするということですか。
竹下 意識というより、石川さんはそれができるという現実。そして両国でできるかどうかは相手である僕に懸かっているということです。それができて提示した時、業界にどう伝わるかという。
2028年から逆算して動いている
今のところ順調にいっています
―少なくとも今の石川修司に勝てば竹下幸之介に対する評価はガラリと変わるでしょう。それほどの影響力が、今の石川選手が持つ価値にはあります。両国で防衛を果たしたあとのことは…。
竹下 あのう、僕が考えるところの一番いいトシというのがあって、それは32歳です。2028年ぐらい。そこに自分を向けていっているんで、目の前のクリアすべき試合以外にやりたいこととか目標って特にないんですよ。
―物事を10年という長期スパンでとらえていると。
竹下 はい。10年後、竹下幸之介がどういう形になっているか逆算して動いているんで。なんなら大学に入った時点でそれは始まっています。もっと言うなら2012年にデビューした時から…今のところ、順調にいっています。
―2028年の竹下幸之介はどのようになっているんでしょう?
竹下 秘密です。なので10年後、竹下はこうなっているだろうという見方をしてもらえたらいいです。長いスパンで僕を見てもらえれば、プロレスを点ではなく線で見られる。スランプになったり心が折れたりしつつも、そこに向けてはちゃんといっているんで…爆発しますよ、32歳の僕は。もちろん2018年は2018年でやるべきことっていうのはあります。僕はベルトを獲ったばかりの時点で、そんなに防衛回数は意識していなかったんです。とにかく一回ごとの防衛戦でしっかり勝とう、いい試合をしようというので一杯いっぱいだったんですけど、ここまで来たら一つでも多く防衛回数を重ねたいという欲求が出てきて。タイトルマッチって、心と体をすり減らすんですよ。自分が今の立場になって、GHCヘビーの絶対王者として君臨していた頃の小橋建太さんの偉大さが改めて理解できるんです。ここから先は、意地でベルトを持ち続けます。
―誰に対しての意地なんですか。
竹下 自分に対してでしょうね。ここまでやってきたんだから、一回でも多く記録を更新しようと。次に最多防衛記録、最長保持を超えようとする人が出てきた時に「こりゃ無理だ」と心が折れるぐらいに持っていきたい。そうなると対戦相手というより、自分に対してなんですよね。お坊さんが3日間何も食わなかったり、一年の半分…180日ぐらいで毎日40kmぐらいの山登りをする行(ぎょう)があるんです。それを10年続けるんですけど、そういうのですよね。
―これからの防衛戦は行のようなものだと。
竹下 それをすることによって、仮に30回防衛したあと落としても見えてくる世界が必ずある。それを見るためにベルトを守り続けていきます。
―メインを務める者は、それ以外の試合と見比べられてもっとも印象に残る試合を求められる宿命にあります。3・25両国ではグレート・ムタと男色ディーノが絡む6人タッグ戦も組まれており、とてつもないインパクトのある絵ヅラとなるしょう。
竹下 グレート・ムタは僕がプロレスを見るようになったきっかけなんです。『闘魂列伝』というゲームに出てきて、ほかはみんなパンツ一丁のおじさんなのに一人だけ異様なキャラがいる。これは何なんだってお父さんに聞いたら説明してくれて、それでプロレスに興味を持ったという。
―幸之介少年のお父さんは息子にムタをどう説明したのでしょう。
竹下 「これはな、武藤敬司のもう一人の姿であって、ムタになると悪魔と化すんだぞ!」と熱く説明した…って、僕は小さかったから憶えてないんですけど、そうらしいです。で、僕の方は「ええっ、プロレスって悪魔になっちゃうの!?」って驚いて。幼少期の私にとって毒霧は衝撃的でありました。そんなプロレスの入り口となったプロレスラーを、初めて生で見られるのが楽しみというだけです。今回で僕は3回連続ビッグマッチのメインを務めるんですけど、ほかの試合に持っていかれたと思ったことは一度もないし、むしろ違うカラーの試合が盛り上がってくれた方が、メインの色も濃く出せる。どんな試合がそれまでにあっても、最後は僕が子どもの頃に見て「プロレス、すげえ!」と思ったような試合を見せますから。メインイベントってそういうものだと思うんで。あえて意識するならスーパー・ササダンゴ・マシンvs黒潮“イケメン”二郎の方ですね。
―メインを務める場合、シリアスなカラーの試合を見せなければならないですが、ディーノ選手やササダンゴ選手のようなコミカルな要素もビッグマッチでやってみたいと思うことはないですか。
竹下 それはですね、竹下幸之介の好感度を上げるという意味では簡単な道なんです。男色ディーノがタイトルマッチの時にシリアスな試合をすると感情移入されるじゃないですか。でも僕はそうじゃないやり方でやってきたから、それで勝負します。茨の道が大好きなんで。ドMなんでしょうね。追い込まれたい。それによってエクスタシーが満たされる部分もあるんで。
―常々発言している「よりDDTを、プロレスを広めていく」に関しての感触は、サイバーエージェント傘下となった以後はどうでしょう。
竹下 大学で「DDTの試合を見たよ」と言われる機会は増えました。だから入り口に立っている人の数は増えていると思うんですけど、そこからライヴで体感するべくチケットを買って会場までいこうと思う層になると、急激には増えていない。そういうのはジワジワと来るものだから、その時が来るまで自分がチャンピオンでいることが、後々につながると思ってやっています。
―一度は足を運ばないと、お金を払うことで得られるモノのよさは実感として伝わりづらいですよね。
竹下 僕は小さい頃からライヴで見るのが好きだったんで、そこはやる側にまわった今でも何ものにも代え難いですよね。今はいろんなメディアがあるから会場にいかなくても楽しめます。もちろん、それでも十分プロレスの魅力は楽しめますよ。映画も4Kで見ると映像はもちろん、音響もすごいし音楽ももしかすると会場で聴くより音がいいかもしれない。でも、これほどDVDやブルーレイが出ても映画館にいって見るし、歩きながら音楽を聴けるぐらい手軽になってもライヴ会場へいくわけじゃないですか。
―どんなにCDやiTunesで聴けても。
竹下 プロレスも同じです。中継のハンディカメラでリングサイドから見るような絵が見えるのもいいけど、体と体のぶつかり合いひとつをとっても生だと現実感というか、気持ちへの突き刺さり具合が違う。それを感じることによって、ダイレクトに本能へ呼びかけられる。小学生の頃、クラスメート同士がケンカを始めると興奮しましたもん。ガラスの割れる音を生で聴くと妙にテンションが上がったりね。それを味わってほしいですよね。たぶん、映像で見るよりも怖くないんですよ、プロレスって。怖くはない分、よけいな心配をすることなく興奮できるから、プロレスはライヴイベントに向いているってつくづく思いますよね。DDTの両国は、そういう意味でもいい入り口だと思います。