スカパー!公認番組ガイド誌『月刊スカパー!』(ぴあ発行)のスポーツ(バトル)では、サムライTVにて解説を務める鈴木健.txt氏が毎月旬なゲスト選手を招き、インタビュー形式で連載中の「鈴木健.txt/場外乱闘」が掲載されています。現在発売中の2018年4月号には、第52回ゲストとして大日本プロレス・関本大介選手が本連載2度目の登場。誌面では惜しくも載せられなかった部分を含めて大公開!!
※『月刊スカパー!』(ぴあ発行)の定期購読お申込はコチラ
※鈴木健.txt氏 twitter:@yaroutxt facebook:facebook.com/Kensuzukitxt
両国のメインで岡林に負けて
意識が変わったんです
関本大介(大日本プロレス)
©大日本プロレス/FIGHTING TV サムライ/カメラマン:中原義史
一騎当千出場選手によって
自分の立ち位置を変えられた
―ストロングBJの「一騎当千」は今回が4度目の開催になるわけですが、なんと関本大介は過去に一度も優勝していないという意外すぎる事実があります。これはいったい、どういうことなのでしょうか。
関本 この前、私も気づきまして。
―最近気づいたんですか。
関本 今年のはじめです。「今年の一騎当千はストロングだな…あれ? 俺、優勝してねえんじゃね?」と。優勝しているものだとばかり思っていました。私は過去を振り返らない人間なので、錯覚したまま確認しなかったんです。
―それはあれですか、どの大会で優勝したのか、どのタイトルマッチでどのベルトを獲ったのかの記憶がごちゃまぜになってしまっているのでしょうか。
関本 はい。
―もしかすると全日本プロレスの「チャンピオン・カーニバル」に優勝した(2016年)のが一騎当千に書き直されてしまっているのでは?
関本 ……あっ! それですね、たぶん。優勝していないことに気づいた時点で、私は37歳なわけです。どの世界でも35歳を超えるとそろそろピークを迎える。鈴木雅というボディビルのチャンピオンがいるんですけど、彼と僕が同い年で、下の世代に対し「俺を超えてみろ」と言っている。ボディビルの世界も奥深くて、ただ重いものを持ち上げているわけじゃないんです。どれぐらいの時期に絞って、いつ頃にバルクアップしてと、すべて計算してやっていて…って、ボディビルの話じゃなかったですよね。それで、自分ははたしてそこまでの気持ちがあるのかと。
―立ちはだかる気持ちですか。
関本 ええ。
―どちらかというと関本さんは、どんなにキャリアを重ねて実績をあげてきてもチャレンジする姿勢でプロレスをやってきましたよね。
関本 そうです。でも、自分も37なのでこれはもう、立ちはだかる立場にならなければ。優勝できるものならしてみろ…と、一度も優勝していない人間があえて言います。
―おお、あえて!
関本 自分でもムチャクチャやなあって思いますけど、背水の陣を敷くために。
―37歳で背水の陣を敷いてしまうんですね。
関本 第1回目に、優勝戦までいったんです。今思うと、あのチャンスを逃したのが痛かったなと。
―第2回も準優勝でした。いつもあと一歩までいくのですが、それはやはりタイトルマッチとは違う感覚なんですか。
関本 うーん、勝負は勝負ですから。そこは、変わってはいけないですね。どの場面でも気持ちを引き締めて、奮い立たせていかなければいけないと思っているので。アントニオ猪木大先生の精神でいきます。
―猪木さんの精神?
関本 いつ、なんどき、誰の挑戦でも受けると。タイトルマッチだろうがリーグ戦だろうが普段の試合だろうが、同じ気持ちでいかなければならない。勝負は時の運というところもあると今までは思っていましたが、今年の一騎当千からはそんなことは言ってはならないと気持ちを入れ替えました。
―猪木イズムが宿った関本大介が見られると。シングルの連戦となると、コンディションの維持が重要となります。37歳という年齢を踏まえてそこはどうなんでしょう。
関本 そうですね、シングル連戦となると疲れがたまる時もありますね…いや、疲れない! 今、聞きましたか? 否定したでしょ。少しでも自分の中に疲れが見えたら、その瞬間に自分で否定します。そして、BJWクエン酸パウダーを飲みます。
―クエン酸は疲れにいいですか。
関本 私は常に持ち歩いていて、疲れたと思ったらすぐ飲んでいます。毎日飲んでいるからすごい摂取量ですよ。
―今日も飲んだんですか。
関本 今日は家に忘れてしまいました。
―ダメじゃないですか。
関本 さっき水をいっぱい入れて、さあクエン酸を混ぜようと思ったらないんですよ。
―確か数年前から忘れ物が多くなってきたと言っていましたよね。
関本 “DS”と書かれたストップウォッチが、全国の体育館やジムに散乱しています。だけどそれは止まったんですよ。高いストップウォッチに替えたから。
―お金をかけると忘れ物ってしなくなるんですね。クエン酸も1グラム4万円ぐらいのものにしたらいいのでは。
関本 今日はたまたまですよ。そうやって疲れを疲れと思わずして、このリーグ戦を乗り切ろうかと。
―今年の一騎当千はBJW認定世界ストロングヘビー級王者・橋本大地選手の提案で、他団体の選手を入れずに大日本所属のみ(鈴木秀樹はフリーとしてレギュラー参戦)でおこなうことになりました。
関本 去年デビューした青木(優也)までがエントリーされていて、いわば大日本のストロングにかかわる人間はほぼ全員出ていますよね。だからこそ、今までとは違った「壁になる」という意識が強くなったんだと思います。前回まではキャリアも世代も、残してきた実績も近い選手たちで争われていたのが今回でガラッと変わった。それによって自分の立ち位置を変えられたという意味では影響が出ていますよね。二十代の脂の乗った人たちを抑えるには、キャリアが武器になるでしょう。
―これまでは、ことさらキャリアを武器にするという意識はなかったですよね。
関本 そうですね。一瞬一瞬のすごく細かいシチュエーション一つひとつに対応できる能力がキャリアです。年数ではなく…なんて言えばいいでしょう。
―経験値?
関本 それです! より多くの場面を経験し、それに対応してきたのが頭と体に刻まれているので。そこに自信を持つと気持ちの面で追い込まれることがないんです。常に気持ちで上回れる。
シュワルツェネッガーの
名言通りの人生を歩みたい
―このインタビューが掲載される頃にはリーグ戦も終盤を迎えているのですが、自分のブロックで対戦するのが楽しみな選手をあげると誰になりますか。
関本 橋本和樹選手(3・21後楽園で対戦)。彼はプロレスに対しても普段の食事に関してもストイックで、自分を変えようと努力しているのが手に取るようにわかります。それが闘う者として魅力的。階級が違うので、体重で押し潰せるとは思いますけど。
―体形を変えると性格が変わるという話を聞きますが。
関本 それは本当ですね。食べる物も変わるし、体が変われば着ている物も変わる。衣・食の嗜好が変わるから性格にも影響を及ぼします。
―リーグ戦について自己主張した橋本大地選手はチャンピオンとしてどう映っていますか。
関本 ベルトを獲ったことで、自分よりも上にいる人間ですよね。個人に関してどうというよりも、ベルトを持っている人間だからこそ勝たなければいけない対象という感じです、今は。やはり、もう一度巻きたいんで。
―過去に3度ストロングヘビー級のベルトとは巻いていますし関本さんの場合、他団体のタイトルも数え切れぬほど獲得してきました。それでもまた巻きたいという願望が湧いてくるものなんですね。
関本 そこにベルトがあることでテンションが上がるんです。それがある種の快感であって、ずっと味わいたいという欲はリングへ上がっている間はなくならないんだと思います。心が求めているならば、体はそれに応えなければいけない。快感至上主義です。
―それは持った者でなければわからないテンションであり、快感でしょう。
関本 アーノルド・シュワルツェネッガーの名言で「私はパンプアップをして快感得て、セックスをして快感を得ている。人生で2つも快感を得られる術を持っている」というのがあるんです。『鋼鉄の男~パンピング・アイアン』という映画の中のセリフなんですけど、私もそういう人生を歩みたいなと。自分は18からプロレスをやっていて、プロレスしか知らないですからその頂点に立つことで快感を得て、人生における2つの術にしたい。
―関本大介からプロレスを取ったら何も残らないと。
関本 自分にとってはプロレスしかないからリングの中が日常であって、僕が追い求めてきたものそのものなんです。だからこの中で起こったことはすべて受け止めるしかない。一騎当千に優勝して、もう一度ストロングヘビーのベルトを巻いて防衛を続ければ37歳にして両国のメインにもう一度立てるんで。
―毎年夏開催だったのが、今年は11月11日です。
関本 ポッキーの日。
―そこ、重要ですか。
関本 はい。
―好きなんですか。
関本 お姉ちゃんの店で出るポッキーは好きです。自分、アナログゲーマーなんで。
―それにしても、関本さんも年齢というものを意識する段階に入っているんですね。
関本 35を超えたあたりから年齢と向き合うようになりました。最初の両国(2015年7月20日)のメインで岡林(裕二)に負けてベルトを獲られたあとからですね。もう、いつまでも二十代前半の気持ちでやっていては通用せんぞと意識が変わったのは。
―日々の練習に関しても、量よりも質に比重を置くようになったとか。
関本 まさにそれです。ウエートトレーニングにしても、とにかくより重いものを持ち上げて今日は何kg上がった、次はその数字を上回るぞというだけでやっていましたけど、35を過ぎて抑える時期も入れた方が筋肉の成長にも効果的だということを学びまして。重量だけを追い求めてはいけないんだなと。そういうことをボディビルの先輩たちに教わりました。もちろん、数字を上げていい時期は目標としている記録にトライします。
―岡林選手はデッドリフトで300kgを上げているそうですが、関本さんは?
関本 僕は280kgですね。だから、目標としてはそれを超えようとしますけど、365日そうだというわけではないんです、この年齢だと。ただ、確実に前の日よりは強くなっていたいですよね。
―ピッサリさんは2歳しか違わないのにとにかく1gでも重いものを持ち上げようとしている印象ですが。
関本 彼は普通の人間と感覚が違うんで。すべてが根性論。科学ではないです。
―根性論で300kgを上げられるわけですから、確かに普通の人間ではないです。ところで昨年2月に、大日本が実施した休養システムの第1号として1ヵ月間リングを離れました。
関本 ケガで欠場した時とは気分的に違ったので気持ちのリフレッシュができたし、体のメンテナンスもできました。見ている方はどう映ったかわかりませんが、自分としては動きがよくなったという感触もありましたし、あのあとからは首、腰、ヒザ、ヒジとどこも痛いなと思う箇所はないです。
―37歳で体のどこにも爆弾を抱えていないならば、あの制度は意義があったということになります。
関本 試合ができなかったのはうずうずしましたけど。ケガしたわけじゃないのに、自分がリングに上がっていないとやっぱり気になりましたねー。道場でサムライTVのニュースを見て、何があったのかを確認していました。
―休養中にやっておきたいこととして、パソコンが使えるようになりたいと言っていましたが。
関本 ああ、ちゃんとタイピングできるようになりました。ブラインドタッチは無理ですけど、それまでは人差し指だけで打っていましたから。ただ、せっかく文章を打てるようになったのに普段はパソコンを使う目的がないんです。
―日常生活においてパソコンが必要なことがないと。
関本 生活必需品ではないですね。調べものをするならスマホでできるし。文章を作成する場合はここを開くんだよって、新土(裕二=リングアナウンサー)君に教えてもらって印刷できるまでになったんですけど。
―前はプリントができなかったんですね。
関本 できるわけがないです。さわったこともなかったですから。ようやく印刷できるまでになったのに、印刷するものがないんじゃ仕方がないですよね。