スカパー!公認番組ガイド誌『月刊スカパー!』(ぴあ発行)のスポーツ(バトル)では、サムライTVにて解説を務める鈴木健.txt氏が毎月旬なゲスト選手を招き、インタビュー形式で連載中の「鈴木健.txtの場外乱闘」が掲載されています。現在発売中の2018年12月号には、第60回ゲストとして全日本プロレス「世界最強タッグ決定リーグ戦」で2連覇を目指す諏訪魔&石川修司の“暴走大巨人”が登場。誌面では惜しくも載せられなかった部分を含めて大公開!!
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暴走大巨人は
核弾頭と発射台
諏訪魔(全日本プロレス)
石川修司(フリー)
©全日本プロレス/FIGHTING TV サムライ/ カメラマン:北島和将
諏訪魔にけしかける
石川のサブリミナル効果
日本のプロレスシーンにおいて冬の風物詩として定着している「世界最強タッグ決定リーグ戦」は、1978年の第1回開催から数えて今年で41周年を迎えます。プロレスラーになる前、ファン時代に見ていましたよね。
石川 僕は90年代の四天王プロレスの時代ですね。そこに殺人魚雷コンビ(テリー・ゴーディ&スティーブ・ウイリアムス)が絡んでやっていた頃が一番印象強く残っています。
諏訪魔 俺はそれよりひとつ前の時代になるのかな。スタン・ハンセンとブルーザー・ブロディのコンビ(1982~1984年)に始まって、天龍(源一郎)さんと阿修羅・原さんの龍原砲も見ていたし、天龍さんとハンセンが組んで全勝優勝した時(1989年)あたりまでが一番ハマっていましたね。
そんなテレビで見ていた大会に初めて自分が参加できた時のことは憶えていますか。
諏訪魔 最初に出場した時(2004年)のパートナーって、本間(朋晃)さんだったんだよね。懐かしいなあ。ただ、あの頃はまだデビューしたてだったからガムシャラで、嬉しかったとは思うけどそれが記憶として残っていないよね。ただただ必死だったということしか…ああ、でも思い返してみると『オリンピア』が流れる中、たすきをかけて入場式に出た時、嬉しいと思ったね。いやあ、懐かしい。
石川 僕は初めてエントリーされた時(2015年)のパートナーが星誕期さんだったんです。
諏訪魔 あー、デカかったよね。
石川 普段から組んでいる人ではなかったですから、これは頑張らなきゃみたいな使命感があった気がします。でも諏訪魔さんと同じで、あの曲とたすきで最強タッグリーグに出られるんだなっていう実感を味わいましたね。
その年、諏訪魔さんは宮原健斗選手とのコンビで出場しているので、お二人は公式戦で当たっているんですよね。その二人が2年後にはタッグを結成し初出場で初優勝を果たしました。リーグ戦中、仲違いがあるなど紆余曲折を経ての栄冠だっただけに、時間を置かないとファン時代に見ていた大会で優勝できたという実感が湧いてこなかったのでは?
石川 そうでしたね。前半につまずいて、途中和解してそこから立て直した感じだったからチームとして最後まで全うできたことの方が大きかったのは確かです。
スタート以外はリーグ戦優勝、プロレス大賞最優秀タッグ賞受賞、世界タッグ王座奪取と順調にきて、まったく揉めることがなくなりました。
石川 欠場期間まで一緒だったという。
諏訪魔 そうだねえ、気が合っちゃってんだよね。休みに入って復帰するまでがまったく同じってないよな。今は二人が組むことで、プロレス界で何かできないかっていうことを常に話しているよね。飢えてっからさあ、俺たちは。だから(石川の活躍が)刺激になるし、それを見て俺もやらなきゃって思うようになるし。
石川 諏訪魔さんって爆弾持っているじゃないですか。
諏訪魔 爆弾落とした方がいい? 最近、落としてないからなー。
落としてくれた方が業界的には盛り上がります。
諏訪魔 そうだよねえ。
石川 爆弾を持っている人って全日本で諏訪魔さんだけじゃないですか。僕はそういうのにあこがれるんで。けっこう、いいカッコしいだからそういうことができないんですよ。だから諏訪魔さんがポーン!と爆弾を投げてくれたら、ついていこうって思えます。
諏訪魔 言いたいこと…言っちゃう?
石川 アッハッハッハッ!
諏訪魔 ギリギリ攻めるのが、好きなんだよね。
ここ最近はけっこう抑えていたんですか。
諏訪魔 そういうのは想像に任せます。いや、常に爆発しているよ。自分を曲げるのは嫌いなんで。真っすぐぶつかっていくっていう、それだけ。それで何かあれば爆発するし。今はタッグのベルトも持っているんだから、いいんじゃないですか。
でも石川さんがけしかけるタイプだから…。
諏訪魔 そうなんだよ! なんか爆発させよう、爆発させようとしてくるから。
石川 僕もギリギリをいこうとしているんですよ。諏訪魔さんを前に置いて背後からギリギリにいこうと。
諏訪魔 待ってくれよ、俺はそんなに冒険するタイプじゃないんだからさ。
石川 ええっ、そうなんですか!?
諏訪魔 でも言われたことが残っちゃうから、言われたら「そうなのか」ってその気になっちゃうんだよね、俺。人を信じちゃうタイプなんだから…だから石川選手のことは信じていますよ。
石川 僕は持っていこうとなんてしていないですから、信じて大丈夫です。ただ僕は、暴走大巨人で全日本プロレスを盛り上げていきたいんで、日頃からサブリミナル効果のように言い続けているだけですよ。
諏訪魔 やっぱり持っていってんじゃねえか、おい!
一度は落とした世界タッグのベルトを保持したままリーグ戦に臨めるわけですが、去年と比べると安定しているという印象です。
石川 安定している分、もっと面白いことができたはずとも思いますよね。もちろん日々の試合の中で暴れてはいますけど、そこにプラスアルファの部分で何かできたはずだと。
諏訪魔 そうだね。安定なんて言われちゃったらさ、もうやるしかないじゃん。そう言われた方がこっちは刺激されちゃうよ。ベルトを獲ったり、リーグ戦に優勝したりしても満足するような俺らじゃないからね。じゃあ、リング上で見せてやるよ。事故起こしちゃおうか。
いやいや、事故は起こさないでください。
諏訪魔 試合の事故じゃないよ。事件か。インパクト…イレギュラーがないとダメってことなんでしょ? わかりましたよ。
諏訪魔に誘われても石川が
Evolution入りをしない理由
今回はチャンピオンチームとして、そして前年度優勝者としてどう考えても優勝が義務づけられた立場にあります。
石川 その中で強いチーム揃いですからねえ…ずっと闘ってきた関本大介も秋山(準)社長と組んで出るし、ジョー(ドーリング)とディラン(ジェイムス)というとんでもなく強い二人のチームがあったり…外国人相手、苦手なんです。
諏訪魔 そうなの?
石川 卒業旅行でラスベガスにいったんですよ。そこで現地のおばちゃんに「エクスチェンジ・マネー・プリーズ」って頼んだら「ハーン!?」って言われたのがトラウマになっていまして。ほかにもすごく親切にしてくれたウェイトレスのおばちゃんが、チップが少なかったらしくて「これだけかよ!?」っていう態度をしたのもショックで。
諏訪魔 そんなもん、やっちまえばいいんだよ。
そうはいかないでしょう。
石川 捕まりますよ!
諏訪魔 俺、お金盗まれたことあるよ。レスリングの大会でフィリピンにいった時、スラム街の裏路地にある家まで連れていかれちゃって「飯食って待ってろ」って言われたからドンチャンやっていたんだけど、毒が盛られていたみたいで。俺の仲間もお金抜かれて。
石川 完全に犯罪に巻き込まれていますよね、それ。僕なんてかわいいもんじゃないですか。
諏訪魔 今、そのこと思い出したから俺も外国人チームは許さない。
優勝決定戦(12・11後楽園)で当たるジョー&ジェイムスはいい迷惑ですよ。
石川 日本人の強さを見せないといけないですね。
諏訪魔 おう、そうだよ!
TAJIRI選手のパートナー、ギアニー・ヴァレッタも外国人選手です。
諏訪魔 あんなヒゲもじゃもじゃで「力道山」って、おかしいだろ。
マルタ共和国で初めてプロレスをおこなったという意味で呼ばれているんですが。
諏訪魔 日本でそんなこと言われたってさ、どう見たってワルモノじゃん。
でも、あのヴィジュアルで29歳ですよ。
諏訪魔 ……それはヤバいな。ちょっと悪いこと言っちゃったか。
エントリーされたチームの中では一昨年に全勝優勝を果たしたGET WILD(大森隆男&征矢学)との公式戦(12・5広島)が注目されています。
諏訪魔 そうなの? 俺からすれば、もういいだろって思うよ。組んでないんでしょ、最近? なんでここでまた組むんだよって。
石川 全日本時代の会見が面白かったじゃないですか。それ以上のものを見せてくれないと。
諏訪魔 それ以上のものを見せようとして前回出たのにさ、俺は出なかったって思っているから。なのにまた出てくるんだから、これでもうファイナルだよ。
GET WILD劇場とまで言われたあの会見を超えるのは実際問題難しいでしょうね。
石川 僕はこれまで絡んだことがなかったんで、会見の印象しかないんですよ。
諏訪魔 時代は変わってんだよ、もう。立場だって変わってんだ。征矢だってWRESTLE-1でやっているわけだし、大森さんなんてウチの役員だよ? アホできねえべっていう話だよ。
石川 やるんだったら前以上の面白いものをやってほしいですよね。
諏訪魔 そうだよ。だったらいいよ。
石川 じゃないとこのリーグ戦が盛り上がらないんで。みんながプラスアルファを考えていかないと、ただのリーグ戦で終わっちゃうじゃないですか。
そういう意味では、去年のお二人は揉め事ではありましたけれども話題になりました。
諏訪魔 じゃあさ、安定しているなんて思われるのは嫌だから仲間割れしちゃうか!
話題作りのために仲間割れするって、先に宣言しちゃうですか!?
諏訪魔 話題重視だ、今回は。こういうの、なんていうか知ってる?
石川 知りません。
諏訪魔 佐藤光留方式っていうんだよ。なんかわざと揉めてヤキモキさせるっていう。
石川 僕は諏訪魔さんと仲間割れしたくないんで、ほかの方法を考えましょうよ。
諏訪魔 じゃあ、俺がキレるよ。もう勝敗度外視!
リーグ戦で勝敗度外視したら優勝できないですよ!
石川 ガハハハハハッ!
諏訪魔 そこは大丈夫だよ。俺が勝敗度外視で暴れても(石川が)まとめてくれるから。
あー、すごく腑に落ちました、今。
石川 ギリギリで攻めますよ。ただ優勝するだけじゃ面白くないんで事件起こしましょう。
諏訪魔 ギリギリでいこうな。いいよもう、連覇とかそういうの気にしてらんねえよ。勝つのなんて当たりめえなんだよ。その上で全部持っていくチームが俺らだから。全部持っていっちゃう…なんかいたな、そういうの、ウチにも昔。最強タッグリーグがどれだけ話題になるか、占有率でいくよ。アタッキングですよ。
それでEvolutionのスローガンを“突撃”にしたんですか。
諏訪魔 そうだよ。大きい方は構えて受け止めるみたいに思われがちだけど、俺らはそうじゃないから。自分たちからアタッキングしていく。“受けの全日本”って言われるけどさ、攻めの全日本だっていいじゃねえか。
石川 諏訪魔核弾頭ですよ。
なんでそうやって後ろに回ろう、後ろに回ろうとするんですか。
石川 僕は発射台ですから。発射台も大きくなければ飛びませんよ。
諏訪魔 こういう刺激をくれる取材はいいな!
それはどうも。ところで…石川さんはこれほど諏訪魔さんと組んでいるのに、なぜEvolutionの正式メンバーにならないんですか。
諏訪魔 俺はチクチク誘っているんですよ、入れって。
石川 入らないっていうこだわりは特にないんですけど、まずは暴走大巨人としてもっともっと…というのがあって。
入った方が収まりいいと思うんですが。
諏訪魔 そういう声はあげてもらいたいねえ! でもさ、女を口説くのと一緒でさ、なかなかモノにできない方が落とした時に嬉しいじゃない。俺は時間をかけて口説くタイプだから。
石川 アハハハハ…。