スカパー!公認番組ガイド誌『月刊スカパー!』(ぴあ発行)のスポーツ(バトル)では、サムライTVにて解説を務める鈴木健.txt氏が毎月旬なゲスト選手を招き、インタビュー形式で連載中の「鈴木健.txtの場外乱闘」が掲載されています。現在発売中の2019年2月号には、第61回ゲストとして2・16両国国技館で「マッスル」を開催するマッスル坂井と男色ディーノ(DDTプロレスリング)が登場。誌面では惜しくも載せられなかった部分を含めて大公開!!
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※鈴木健.txt氏 twitter:@yaroutxt facebook:facebook.com/Kensuzukitxt
我々が両国へチャレンジするにあたり、
さらに成長した姿で力を貸してくれる
純烈の酒井一圭さんはカッコイいい
マッスル坂井(DDTプロレスリング)
男色ディーノ(DDTプロレスリング)
©マッスル/FIGHTING TV サムライ/ カメラマン:言美歩
安否確認の聖地・両国国技館にて
8年分のドラマを一日で見せる
まず『月刊スカパー!』はプロレスファン以外の皆様も見る一般誌でございまして、そこで「マッスル」がどういうものかを伝えなければなりません。お二方、何も知らない人に「マッスルってなんですか?」と聞かれたらどう答えるようにしているんですか。
坂井 ……。
男色 ……。
「プロレスと同じなんですか?」とか聞かれるんですか。
坂井 プロレスと同じですよ。命を懸けた真剣勝負。
でも、それだと通常のプロレスの説明ですよね。
坂井 なんとなく、その場その場で取り繕ったことしか言っていないんですけど。聞き手の方の温度に合わせて…。
いや、聞き手に関係なくたとえば飲み屋でおじちゃんおばちゃんから「あんたマッスルっていうのやってんの? マッスルって何かね?」と聞かれるようなシチュエーションです。
男色 それ知ってんじゃねえかよって話ですよ、こっちから言わせてもらうと。
坂井 難しい…また一個やることが増えた。
男色 「ハッスル」がある時代だったらまだね、何か言えたんですけど。
坂井 ファイティングオペラですかねえ。
男色 おおっ、堂々と居座った、そこに!
坂井 僕の造語ですけど、ファイティングオペラということになっちゃうでしょうね。
巷でよく言われているのは「通常のプロレスと比べて演劇色が強くドラマ性がある」といったものですよね。
坂井 そう書かれることはありますけど、自分たちの方から言うことはないですね。
男色 自分らから演劇だとかなんて言えない。
この記事はマッスルを知らない人に読んでいただくことによって、一人でも多くの方に興味を抱いてもらい2・16両国国技館に来ていただくためのものですので、それに合ったことを言っていただければいいかと。
坂井 翌日のDDT両国と比較すると人件費がかからないというメリットはあるか。
男色 それ、読む人のメリットになるのかまったくわからないけど。
人件費がかからない形がどういうものなのか見てみようとなる可能性はあります。
男色 あとは、DDTよりも時間が短くなると思いますよ。
通常、プロレスのビッグマッチは4時間ぐらいやります。
坂井 基本的にプロレスは連続ドラマを見せるわけですが、マッスルはシリーズの中で展開していくのではなく一話完結のものなので。
年に一度もやっていないです。
坂井 8年ぶり(単独興行としては2010年10月6日、マッスルハウス10後楽園ホール以来)ですから、今は8年に一回のペースですね。
男色 それが現状よね。
坂井 DDTは年間100試合程度やっているわけで、単純計算で8年だと800試合分のドラマになる。それと同じ濃度のものを一日で見せようと思うんですよ。
それは相当濃いですね。
坂井 そうなると、当然ながらレスラーがリング上でレスリングに割ける時間は短くなってきますが全員、たった一日で人生が変わってしまうような密度でやることになります。
物事が変わるのは一瞬って言いますよね。
坂井 2月16日に、その後に待っている8年分の人生が決まってしまう。
マッスルハウス10を最後に坂井さんが家の金型工場を継ぐために引退して、その際「20年後の10月6日にマッスルハウス11で会いましょう」という形で終わりました。それが前倒しされた形となります。
坂井 そこは世の中におけるプロレスを取り巻く環境が変化していますから。2030年のマッスルは東京ドームで開催する計画になっておりまして…。
2010年の最終興行で観客に配った2030年10月6日のチケットに東京ドームって入っていましたっけ?
坂井 あえて会場名は入れませんでした。2030年に東京ドームがあるかどうかもわからないんで。席番はなんとなく入れてあるんですけども。
あの席番はどう見ても後楽園ホールですよね。「南側B列20番」とか。
坂井 そこはどの会場でも対応できるような番号なんで。後楽園だと30列目となるとわりと後ろの方ですが、東京ドームで30列目って前の方だから嬉しいなと。
男色 あと2030年の予約はまだできないしね。20年後の予約は東京ドームも受け付けてくれないのよ。
予定していた会場が違うとはいえ、それが12年ほど早まりました。
坂井 それで今のご時世と照らし合わせると、そのまますぐに東京ドームとはいかないわけで、定期的に中規模の会場でやっていかないと…マッスルを一番わかりやすい言い方で言うと「2030年10月6日に東京ドーム公演を予定しているプロレス団体」でいいと思うんですよ。なので、その中間の3合目あたりで両国国技館をクリアするのは当然のことです。
両国国技館が中規模という認識なんですね。
男色 これができないようであれば、東京ドームなんていけないでしょ。
坂井 避けては通れない。
それは本体のDDTが定期的に両国国技館大会を開催し、成功させていることが刺激になっているのでしょうか。
坂井 あとは、経費削減の一環として一興行あたりの固定費を下げて、そのうちの一日を使ってマッスルをやらないかという申し出が高木三四郎からありまして。
高木社長の方から出された案だったんですね。自発的に両国2DAYSのうちの一日を使ってマッスルをやりたいと思ったわけではないと。
坂井 僕はマッスルをこの日にやりたいと言ったのは引退興行以外なく、基本的に会社の決めたスケジュール通りにやっています。
やれと言われた時はどう思いましたか。
坂井 えっ!? あのー、はいという返事しかしたことがないんで。それ以外の返事を僕は知らないですね。
即答だったんですね。
坂井 嬉しいぐらいでした。
男色 昔からそうなんだけど、決まってから私が知るのは10番目ぐらいなのよ。
意外と後の方なんですね。
男色 だから何事も毎回ピンとこないという。それで今でも「ああ、やるんだ。頑張ってね」ぐらいの受け取り方なんだけど。これはね、見に来ていた人たちもあれから8年が経っているわけで。どうなんでしょうね。
坂井 やっぱり8年ぐらいで一回やっておかないと。20年スパンだと忘れられちゃう。
男色 4年に一回だと、ちょっと忙しない。ワールドカップもその年が終わるともう4年後の監督は誰?ってなるじゃない。
坂井 あとは我々もお客さんも安否を確認しなくてはならないというのもありますしね。その場が両国。本当は国技をやる場所なんだけど、我々にとっては生存と安否を確認する場です。もはやそれは国技に匹敵するレベルのものだってことですよ。それを認めてもらうことで貸し出していただけるんですから。
男色 お相撲さんも2ヵ月に一度ぐらい国技館で安否確認しているんでしょ?
健康診断のことですか。
男色 これからの時代、安否の確認は必要よ。
坂井 そういう意味でも両国国技館は安否確認の聖地と言えます。今回のマッスルが日本武道館でも横浜アリーナでもないのは、それが理由です。
生存確認した結果、本当にいない人はたまらないですね。
男色 多少いるとは思うけどね。
マッスル練習生が1人入った
ペドロ高石さんの息子です
坂井 正直、このメンバーで両国やっていいのかって思いますよ。普段はスーパー・ササダンゴ・マシンとして活動しているマッスル坂井、DDTにおける第2試合の要であるアントーニオ本多、生命保険会社に勤務するペドロ高石と趙雲子龍といったメンバーたちは誰一人として両国のメインに出たことのない人たちで、ポスターに載るのも虫メガネで見なければ見つけられないような者ばかりですよ。
相撲番付表の序の口みたいな。
坂井 唯一、両国メイン経験者の男色ディーノも絶賛欠場中で、なんなら一番戦闘能力が低いですから。それで両国をやるってどういうつもりなんだと。それならDDTをロウとスマックダウンのように2つに分けて一日ずつやった方がまだいいだろうと思うんですけど。NXTでもホール・オブ・フェイムでさえないんだから。
中途半端ですね。
坂井 その中途半端なメンバーでどれぐらいできるかという高木さんの社会実験なんでしょうね、これは。あるいは税金対策なのか…。
普通なら、一度引退して復帰すると批判されるじゃないですか。マッスルも2030年までやらないと言っておきながら、2012年のDDT日本武道館大会の前座として一日復活したり、#大家帝国興行という形でそのカラーがクローズアップされたりということをやってきながら、歓迎されているのが面白いなと思います。7度もカムバックするたびに批判される方もいるというのに…。
坂井 それほど興行の存在が周知されていないんでしょうね。
そんなことはないでしょう。あれほどの熱気を生んでいたんですから、期待されているのでは?
坂井 じつは僕もそう思っていたんですが、後楽園ホールで即完売していた頃と比べると売れ行きが…という現実が今、横たわっておりまして。
あー、両国は後楽園の何倍もキャパがありますからね。そこはやはり従来の前哨戦などで興味をつなぐということができない形態の弊害です。
坂井 DDTの興行スケジュールの中で継続的にそれをやるのは難しいですよね。12月30日に後楽園で「M王グランプリ2018」をやってマッスル両国大会のメインに出場する1人は決めたんですけど。
アントーニオ本多選手に決まりました。
坂井 ディーノさんは(首の負傷により)解説をやっていました。
8年ぶりの開催なのに、メインへの出場者決定戦にも出られなかったという。
坂井 でも、1月にM王グランプリ2019をやる可能性があるので、それに勝てばメインに出られますよ。
男色 あー、そうなんだ。18の覇者と19の覇者がぶつかるんだ。
坂井 最高でしょ。
男色 でも、出られるかどうか定かではない状況なんだけど。
ディーノ選手が試合に出られないとなると痛いですよね。
男色 そうでもないでしょ、マッスルにおける私は。
坂井 いやいやいや、知名度が…。
男色 ……そうでもないぞ! ここにすがらなければいけない状況は、もう詰んでるよ。
坂井 唯一の両国メイン経験者であり専門誌の表紙を飾った方が何を言っちゃってるんですか。でも、思われている以上にお体の具合が芳しくないんですよ。ピンチですよね、これ。男色ディーノの代わりはいないし。
ここにきて次世代の男色ディーノが育っていない状況が響いていますね。
坂井 育てるものですか? 男色ディーノって。
そうした意志を持つ人材が出てこない弊害ということです。それがこんなところで出るとは。
坂井 でも吉本の芸人さんとかがみんなダウンタウンさんに憧れますけど、目指すべきはダウンタウンさんじゃないということに気づくじゃないですか。そういう意味では、男色ディーノに近づけば近づくほどなろうと思うような存在ではないことにみな気づくんだと思います。
男色ディーノは底が丸見えの底なし沼だと。
坂井 そういうことですよ。
男色 そもそも憧れて入ってきてないから、そこから前提が崩れているわよ。
坂井 憧れて入ってきた人はいっぱいいるじゃないですか。彰人とか。だからディーノさんのコンディションを踏まえつつメインイベンターを決めなければというのはありますよね。
マッスルにおいても誰がメインを張るかというのは重要な案件なんですね。
坂井 だと思います。団体の顔ですからね。興行の顔。自分も狙ってはいますけど、ちゃんとした手順を踏まないとメインイベンターとしての信用は得られませんから。
男色 あのー、このタイミングで言うのもアレなんだけど…マッスルがなんなのかまるで説明していないよね、今のところ。
坂井 あー、基本的にはマッスル坂井/スーパー・ササダンゴ・マシンのソロユニット的な部分はありますよね。
男色 絞っていこうよ、層を。そこにだけアプローチすると。そうなると…だいたいメンバーと観客は同年代になるから、マッスルで年齢が下の方って誰になるっけ?
坂井 んー、趙雲じゃないですか。
趙雲選手も40歳ですよ。どんだけ高齢化しているんですか、マッスルは。
坂井 練習生が1人入ったんですけどね。
練習生?
坂井 ペドロ高石さんの息子さん。高校2年生なんですけど。
男色 2030年のマッスルハウス11が、選手たちが自分の子どもをプロレスラーに育てあげて、それが集まって開催するというものだったじゃない。それでペドロさんだけが愚直に息子を送り込むという。
マッスルの練習生って何を練習するんですか。
男色 強いやつがベルトを獲るのが通常のプロレスですけど、人柄や挨拶というところでベルトを獲ってほしいんですよ。人間性によって頂点に昇りつめるためのトレーニングね。
坂井 まだ全然ですけどねっ。
男色 ウッヒャヒッヒャッヒャ! 可能性を感じさせる原石ではありますよ。
あまり気づかれていないですが、マッスルも着実に次世代へと移っているんですね。
男色 まだこの一件だけですけどね。
坂井 ちょっとね、マッスルファミリーを増やしていかなきゃならないですから。
坂井さんのところのお子さんはどうなんですか。
坂井 まったくやる気がないですね。親のやっていることに興味を示さない。
マッスルをやらせたいと思っていますか。
坂井 僕は…思わないですねえ。
男色 思わないんだ!
坂井 やりたいと思ってくれるかどうかは、これからの頑張り次第というか。
親の背中の見せ方次第。ただ、2030年にはマッスルメンバーの子どもたちが集まって開催すると広げてしまった手前、自分の子が出ないというのもアレですよね。
男色 まあ、こればかりは職業選択の自由というか、親が強制するようなことじゃないからねえ。
坂井 変わった少年時代のエピソードを持ちがちなレスラーっているじゃないですか、飯伏幸太とか。あとは新潟県黒埼町一の変わり者と言われた里村(明衣子)さんとか。そういう変わり者が集まりがちなプロレス界ですけど、現状で笑えないぐらいの変わり者なんですよ、ウチの子は。
ほう、それはよかったじゃないですか。
坂井 いや、だからこそ今の時点でまだイジれないんです。
今までにないプロレスラーの
セカンドキャリアを提案する
そういう将来的なことを踏まえつつも、今回は今回で形にしなければならないと。マッスルといえば坂井さんが毎回生みの苦しみを味わうわけですが。
男色 今のところどうなの? ペースで今まで通りでいいのかどうかというのもあるしね。後楽園規模だったら突貫でもよかったけど、両国だとそのスケジューリングでいいのかってなるだろうし。ペースでいうと今までと変わっていないように見受けられるんですが。
ということは、ギリギリになるまで何も出てこないと。
坂井 ヤバいね。
以前、定期的にマッスルをやっていた頃に「広い会場でやれたら広い会場なりの見せ方ができるからやってみたい」と話されていました。
坂井 そこは両国じゃないとできないことで、まだやっていないことは考えています。でも、メチャメチャ難航している。
男色 今までは思いついて後楽園でやろうとしてその範囲で収まっていたんだけど、それが広がると難しくなるというのがあるんですよ。
坂井 これをやったらこの人たちに迷惑がかかるなとか、こっちの人は怒るだろうなとか考えながらやれるようになったんですけど…正直、今は生みの苦しみよりも売りの苦しみを味わっています。
誰がうまいことを言えと。
坂井 今までにない苦しみを味わえてよかったです。東京ドームをやるといって後楽園の人数しか来なかったらヤバいですからね。鶴見亜門という、当時はプロレス界の過激な総合演出家と呼ばれていた人が、今はDDTというプロレス団体に勤務しながらマネジメントの基礎を学んでいるところなんですが、彼の方から「両国は3000人を目標にしろ」と。そこに到達しなければ今後、DDTにおいてマッスルを開催することはないと思えと命じられております。
そんな厳しい通達を。2030年にできなくなる可能性があるわけですね。
坂井 やれたとしてもDDT主催ではなくなりますね。ただ、そこがウリなわけじゃないんだから。それは背景であって、興行の中身の話ですよね、ここですべきは。
動員という意味では純烈の存在は大きいですよね(2018年の紅白歌合戦に初出場を果たしたグループ。リーダーの酒井一圭は純烈結成前に酒井一圭HGのリングネームでマッスルに出場していた)。一圭さんとはどういうきっかけで知り合ったんでしたっけ?
坂井 高木さんとの共通の知り合いがいて、その繋がりで紹介してもらって最初のマッスルハウスに出場してもらったんですよね。その時は、元ガオブラックとして大きな貢献をしてくれたんですけど、今回も我々が両国へチャレンジするにあたり、さらに成長した姿で力を貸してくれるのはカッコいいと思います。
男色 何を差し置いてもオファーを受けてくれるって言ってもらえて。まだ紅白出場が決まっていない半年ぐらい前の時点で、マッスル両国をやるという話が出た時に「ウチらが紅白に出たらマッスルにもハクがつくよね。だから俺は頑張る」っていうことを言ってくれたんですよ。モチベーションの持ち方がちょっとおかしいぞと思いつつも嬉しかったんだけどね。
坂井 みんなそういう8年間を過ごしてきているんですよ。ディーノだってマッスルにハクをつけるために体をボロボロにしてDDT10・21両国のメインに立って、できればKO-D無差別級のベルトを巻いてマッスルに上がりたいと口には出さずとも思ってやったんでしょうね。僕もスーパー・ササダンゴ・マシンとしてテレビやイベントのお仕事をもらうにつけ、次のマッスルに生かせるかもしれないと思ってやってきました。
生命保険会社に勤務している人たちも含め、8年間の蓄積が両国でフィードバックされるんですね。
坂井 そこに関しては蓄えられたお金という形でフィードバックされるでしょう。
男色 各々の仕事の質は上がっているんで、過去と比べてクオリティーが上がってしかるべきだと思うわ。
坂井 内容は期待していいと思います。ただ…売りの苦しみが。まあ、これは表に出すようなことではないですね。
男色 普段の仕事の質はそれぞれ上がっているけど、プロレスラーとしての質はむしろ落ちてんじゃねえかっていう気がしないでもないし。
みんな、ほかの仕事で成功しているわけですから仕方がないですよね。
坂井 その中で今もリングに上がり続けているディーノさんが、一番戦闘能力が低いという現状ですから。今までならプロレスラーとしてのセカンドキャリアといったら飲食、お相撲さんならちゃんこ屋みたいなイメージがあったじゃないですか。でも、そうじゃないものはと考えてしまうわけです、同世代のプロレスラーたちを見るにつけ。何ができるのかと提案したいことがたくさんあります。
男色 (月刊スカパー!の誌面にあるプロレスラーのファイト写真を指して)こういう試合中のカットじゃなく、この前の段階の写真を使われるのがマッスルなんじゃないかって思うわよね。入場する前の自分の思うこととか、背負ってきているものとか。
過程の方ですね。
坂井 まったくその通りです。
男色 当日はそれを吐き出すにすぎない。でも、リングで試合をするよりもそっちの方が長いわけだから。15分、20分よりも普段闘っている方が長いし、それが8年分あるわけです、今回は。
坂井 そういうリングに向かうための気持ちをぶつける場所。そこで気持ちを高めて2・16両国に向かうということでしょ。
男色 そう。8年間だけじゃなく四十代のこれからをね。まだまだ終わりじゃないから。
坂井 受け身はDDT2・17両国で取りますよ。
男色 受け身じゃないところで私たちはやっているんだぞと。
坂井 受け身じゃないところで精神と体を追い込んでいますから。プロレスをずっと休んで2030年を迎えると思っていたんですけど、プロレスラーとしての活動を再開したら自分の中のクリエイティビティな部分をフルスイングで吐き出せる場がほしいと思うようになりました。だから本当のところはマッスルを両国でできるなんて、ご褒美だと思っています。そのフルスイングをどういう形で見せるのか。ディーノさんもDDTでやっていないことやってほしいし、それはかかわってくれるみんなにも言えますよね。
男色 人間交差点になってくれればいいのよ。
じつはDDT本体よりもマッスルの方がサムライTVにおける生中継は早かったわけですが、今回も生中継されます。
坂井 生向けではあると思います。どの部分をどの角度から見るかによって興行全体の印象はまったく変わってくると思うんですけど、サムライさんの角度と距離で起こったことを見るのは大きな会場だからこそ見やすいと思います。僕らも細かいニュアンスをするかもしれないですけど、それが映像だとストレスなく見られるから一つの楽しみ方にはなると思います。ライヴと別コンテンツとして両方見てほしいですよね。テレビだと実況・解説もあるし…お願いしますよ、解説。
今、初めて聞きました。インタビュー中にオファーされるとは思わなかったですよ。
男色 これね、恐ろしい話なんですけどみんな当時のメンバーは当たり前のようにとらえているんですよ。ちゃんとした形でオファーする方があんまりいない。この感じもすごいなと。
坂井 ちゃんとオファーしている人ほど返事を保留されるという。今までは直前に直でできたものがね。今のDDTだとハッスルの規模ができちゃう。だから違うんだろうなと思っています。主は通常のメンバーをどう生かすかというのを考えているから。
それを聞いて安心しました。有名どころばかりを集めて主に据えても、それはみんなが求めているマッスルとは違うと思うんで。
坂井 最初にそれを言ってくださいよ!