鈴木健.txt/場外乱闘 番外編

スカパー!公認番組ガイド誌『月刊スカパー!』(ぴあ発行)のスポーツ(バトル)では、サムライTVにて解説を務める鈴木健.txt氏が毎月旬なゲスト選手を招き、インタビュー形式で連載中の「鈴木健.txtの場外乱闘」が掲載されています。現在発売中の2020年12月号では、第80回ゲストとしてDDTプロレスリング・秋山準が登場。誌面では惜しくも載せられなかった部分を含めて大公開!!

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※鈴木健.txt氏 twitter:@yaroutxt facebook:facebook.com/Kensuzukitxt

秋山 準(DDTプロレスリング)x鈴木健.txt 場外乱闘 番外編

D王で当たる選手たちの
カラーを変化させる立ち位置

秋山 準(DDTプロレスリング)

語りすぎ、説明しすぎ
だと言葉は軽くなる

5月にDDTのゲストコーチへ就任したあと、6月27日よりレンタル移籍という形で所属となったわけですが、全日本プロレスやプロレスリング・ノアに在籍していた当時、外から見ていたDDTはどのように映っていましたか。

秋山 当時は男色ディーノ選手と絡むことがあったんで、エンターテインメント性に比重を置いた団体というイメージでした。僕も大阪出身だから楽しいものが好きなんで、ディーノ選手の映像とかは見ていました。

そこは男色ディーノなんですね。

秋山 リング上では絡みたくなかったけど、見る分には笑えたんで。

高木三四郎という人物に関してはどんな印象でしたか。

秋山 (全日本の)社長だった時からわりと話はしていたんで、ちゃんと約束を守ってくれる人だなと思っていました。アイデアも豊富で、何をやるにしても仕事が速い。僕もそうなんですけど、こんなのはどうですか?って振られていいなと思ったらすぐに実行する。

話だけに終わらせることなく動くのが速いと。全日本からスタートした自身のプロレスラー人生がDDTという団体に到達したことを客観的に見てどうとらえますか。驚いた人たちが多かったと思われます。

秋山 ここに来たか!という感じはそんなにないんですよ。皆さんは驚くかもしれないけど、僕自身はそんなに気持ち的に変わりはないです。それこそさっき言ったエンターテインメント性の強い頃のDDTだったらそう思ったかもしれないけど、今は竹下(幸之介)君も(KO-D無差別級)チャンピオンの遠藤(哲哉)選手もしっかりとしたプロレスをやっているんで、よけいにそう思わないのかもしれないです。リング上だけでなく、朝早くから選手たちが集まってリング作りから自分たちでやっていて、そういうのを見るとすごいなと思うし、みんなプロレスが好きなんだなと改めて思いますよね。

所属となって初めての有観客試合によるビッグマッチが11月3日に大田区総合体育館で開催されました。

秋山 そこは有観客になってもお客さんが声を出せないので、それほどDDTの会場だからという違いのようなものはわからないんですけど、お客さんがやさしく見ているなとは思いました。いろいろユニットがあると、応援している方とは反対のユニットに対しては罵声を浴びせたりするものじゃないですか。でもDDTはすべてのものに対し楽しく見ようとしているお客さんだなというのは伝わっていました。そこはやりやすい面もやりづらい面もあります。

やりづらい面ですか。

秋山 僕が攻めた時に、相手の方に声援が飛んでほしいけどそうじゃない時もある。それは声を出せない今だからとかじゃなくて、DDTという団体のカラーとしてあるものなんで。僕は相手に声援が飛んだ方がやりやすいですよね。

大田区の竹下戦後にコメントしていた中で「スタミナの面でどうかなと思ったけど、案外大丈夫だった」と語っていたのが印象的で。今の秋山さんはDDTの中で自分自身がどこまでやれるのかを確認しながら闘っていると思ったんです。

秋山 どこまでいけるのかというのがおっかなビックリじゃないけど、そういう感じで来ていて。最近はああいう一線級の選手とのシングルマッチがなかったんで、ある程度準備はしてきたけれども自分でもどれぐらいできるのかなという不安はありましたよね。

秋山さんでも不安があるというのが意外なんです。

秋山 あるからいいんでしょうね。なかったら余裕ぶっこいて練習もしなくなる。

身体能力的にはトップクラスの竹下幸之介と闘うとは、そういうことですよね。

秋山 だからDDTに来た直後の頃と比べたら、かなり動けるようになっているという手応えもあったし、竹下君とシングルでやると決まってからはさらに上げられました。ウエートトレーニングに関してはもう関節がダメなんでなかなかできないんですけど、心拍数を上げるために走ることはできるんで。

我々は変わらぬ秋山準のイメージで見ているわけですが、51歳になってもちゃんとのびしろがあるのは素晴らしいです。

秋山 いやいや、みんなありますよ。そこでもうダメと思わない限りは。今、僕がダメと思った瞬間に終わります。でも、ダメじゃないと思っているからこうして伸ばせる。まだいける、まだいけると思うようにしているんで。

今現在のDDTでトップクラスにいる竹下選手にシングルで勝ったのは、このリングでやっていく上で大きな一勝と思われます。

秋山 そこは嬉しいとかいう以前に安心しました。全部とは言わないけど頭の中に描いているものがなんとかできたという意味で。高木さんに呼んでもらって、あそこでショボい試合をしたらなんだと思われるし、呼んでよかったと思われないといけない。その点はよかったと思います。

負けた方としては当然、もう一回となります。

秋山 うん、そうじゃないといけないと思うし、そうなるように思いっきりやっつけちゃったんで。

リストクラッチ式エクスプロイダーで決めずにフロント・ネックロックにつないでギブアップさせました。

秋山 彼には技だけじゃなく言葉でもいろいろ言ってきたんで、今も考えているでしょうね。

勝負を決めたあと、言葉を投げかけることなくリングを降りました。

秋山 言葉をかけるのは、もう終わる時だと思うんで。あそこでマイクを持っても軽いだろうし…ほかの人はマイクを持っていろいろ言うじゃないですか。みんなが持たなかったら持ちますけど、みんなが持つなら僕は持たない。反対のことばっかやる。竹下君はよくマイクを持っているけど、あれは持たない方がいい。言葉がすごく軽い、逆効果です。語りすぎる。説明しすぎですね。要点だけを一つバーンと出せばいいと思うんですよね。それこそ見出しになるようなひとことを。だけどそれをずーっと長いことしゃべると軽いなってなっちゃう。

ツイッターでも一つのことを何回にも渡り呟くような。それを1ツイートで伝えなければならないということですよね。

秋山 僕もツイッターとかで言葉を振っていますけど、それがDDTのファンにどれほど届いているかというのは考えますから。

リーグ戦はこの年に
なると自分との勝負

竹下戦に勝って乗り込むシングルのリーグ戦ですが、大田区でビジョンを使い参加選手を発表した時、一番どよめいたのが秋山さんの名前が出た瞬間でした。

秋山 ダントツでおっさんですけどね。

秋山準絡みの公式戦はすべて注目度が高くなるというのが、あのリアクションでわかりました。

秋山 チャンピオン・カーニバル、グローバルリーグ戦、G1クライマックスとシングルのリーグ戦はいろんなところで出てきたんで試合の仕方、ペースもわかっているしケガをしない方法、またはケガをしてからの方法もわかっているんで。問題は年齢から来る回復の遅さだけ。これだけはいかんともし難い。今日も竹下戦から中一日ですけど体、キツいです。昔だったら1日寝ればすぐ回復したのが、ビッグマッチが終わったら3、4日治療しないといけない感じなので。

それが短期間で連戦として続きます。

秋山 リーグ戦は毎回そうですよ。後半は体の回復具合との闘い。ビッグマッチにおけるここ一番の一発勝負なら誰にも負けない自信がありますけど、リーグ戦はこの年になると自分との勝負です。

遠藤選手からの指名で一発目がKO-D無差別級王者との公式戦になりました。

秋山 遠藤選手は「竹下よりもチャンピオンの自分の方が強い」って言っているけど、本当の強さっていうのは今のところ感じられない。ただ、チャンピオンだから何かを持っているだろうし。それが巧さなのかスピードなのか。まあ、チャンピオンに勝っておけばリーグ戦のあともいろいろ広がっていくだろうし、その意味では一発目から大切ですよね。

同じブロックの高尾蒼馬選手なんですが、チームドリフ時代に秋山さんが社長を務めていた当時の全日本に上がって、その時に秋山さんや他の選手から教わったりアドバイスを受けたりしたことがすごく大きかったと言っていたんです。

秋山 彼は人と違うことをやろうとしているし、何よりもウチの嫁さんが大好きなんで。

そうなんですか!

秋山 本当はああいうシュッとしたタイプが好きなんで、なんで俺と結婚したんだって思うんだけど。普段は入江(茂弘)みたいにペラペラ喋るタイプじゃないけど、しっかりと人からのアドバイスを聞いてやっていた。でも、悪い人たちなんでしょ?

DAMNATIONですか? 反体制ユニットではありますが、個人としては全日本に対する恩義は感じているようです。

秋山 悪い人たちならそれ、言わない方がいいんじゃないの? そういう気持ちで向かってくるなら嬉しいけど、ここはリーグ戦ですから。優勝を目指してやるんで、叩き潰させてもらいますよ。

ほかにも大型選手の樋口和貞との公式戦も楽しみにしているファンは多いと思われます。

秋山 僕も楽しみです。竹下、遠藤を脅かす存在に彼はならなければならないでしょうから。

同じ準烈の大石真翔選手も同ブロックです。

秋山 準烈というチームの中でも頑張ってくれて、僕が頼りにしている選手。試合はガッチリいかせてもらいますけど、彼には遠藤選手やほかの選手から点数を獲ってもらいたい。

準烈としての援護射撃を望むと。

秋山 今回のリーグ戦は、僕の方からやってみたいと思う選手たちと当たれる。今までの彼らのカラーを変化させる立ち位置にいたいと思って。たとえば上野(勇希)君の試合を見ていると華やかできれいなイメージだけど、実は彼って僕っぽいんです。練習を見たり話を聞いてみたりしたら僕っぽかった。そういうところも引き出せればと思いますけどね。

これほどのキャリアを重ねてきた上で肌を合わせてみたいと思える相手がたくさんいるというのは、いいことですよね。

秋山 そうですね。あのまま全日本にいたらご隠居さんでしたから。コーチとして来た頃はベルト云々っていうのは考えもしなかったけど、このD王に優勝すればそういう話になってくるだろうし。まあ、いただけるものはいただきますよ。

数えきれないほどのタイトルを獲得してもベルトを欲しいとは思うものなんですね。

秋山 経歴に乗るじゃないですか。そこは一個でも多くあった方がいい。D王グランプリ優勝、KO-D無差別級ってずっと残るわけで。今後の就職活動にも優位になるでしょう。これから目の前のものをクリアしていく中で前なら考えられないようなことも形になっていくと思いますし、僕がノア時代に白ベルト(GHC無差別級)を作っていろいろやっていたように、面白いことができる環境にあるのがDDTなんで。高木さんが獲ったベルト(DDT EXTREME級)なんてまさにそうじゃないですか。

ただしタイトルマッチは路上プロレスだと言っていました。

秋山 路上でもいいですよ、僕は。ただし、冬はやめてほしいです。温かくなる春先から秋ぐらいの間でお願いします。EXTREMEだって獲れば経歴に乗りますよね。でも、もうちょっと真面目にやらせてください。そこでちゃんとした実績を残したからこそやれることだと思うので。