鈴木健.txt/場外乱闘 番外編

スカパー!公認番組ガイド誌『月刊スカパー!』(ぴあ発行)のスポーツ(バトル)では、サムライTVにて解説を務める鈴木健.txt氏が毎月旬なゲスト選手を招き、インタビュー形式で連載中の「鈴木健.txtの場外乱闘」が掲載されています。現在発売中の2021年10月号では、第90回ゲストとして全日本プロレスのジェイク・リー選手が登場。誌面では惜しくも載せられなかった部分を含めて大公開!!

※『月刊スカパー!』(ぴあ発行)の定期購読お申込はコチラ
※鈴木健.txt氏 twitter:@yaroutxt facebook:facebook.com/Kensuzukitxt

ジェイク・リー(全日本プロレス)x鈴木健.txt 場外乱闘 番外編

三冠を獲った瞬間
“人生は闘いの連続”から
もう逃げられないと思いました

ジェイク・リー(全日本プロレス)

知っているプロレスが全日本 だけだからこうなった

チャンピオン・カーニバル初優勝、三冠ヘビー級初奪取と来た2021年ですが、自身に対する周囲の見方が変わってきたという実感はありますか。

ジェイク 今まで連絡してこなかったやつが連絡してきました。

そういうのって、本当にあるんですね。

ジェイク こんな見本のようなことがあるんだなとビックリしました。けっこういましたね。優勝おめでとうの一文のあとに「こういう時期だけど、今度こういう会があるから…」と続くんです。

あー、会いたいということですね。

ジェイク 俺をダシに使うつもりなのかよってね。ベルトというのは目に見えるものだからすごくわかりやすいし、みんながあこがれるものだから俺といるということがその人のキャリアを高める。だから俺を呼びたい、つながりたいんですよ。こういう時期じゃなかったらいってやってもよかったけど。

業界内での変化は?

ジェイク 今、DDTでやっている秋山(準)さんと実は先日、お会いして。今の状況も仕入れた上でいろいろ話してくれて、こういうふうに見て、俺だったらこうするとか、こういうやり方もあるんじゃないかと聞かせてもらったんですけど、秋山さん以外も見ている人が多いんだなとわかりました。だからといって自分の中で何が変わるというわけでもないんですけど。

周囲の見方が変わる瞬間って、快感ではないですか。

ジェイク あー、ざまあ見ろ!はありましたよね。おまえらが無理だって言っていたことを俺はやり遂げたぞという本心はハッキリ言ってあります。でも、いざそういうふうになるとすごく空しくなったんですよ。なんで俺はこんなことで喜んでいるんだろう? そんな次元じゃないだろって。今やるべきことはほかにあるという考えにすぐスイッチしました。

頑張ってきた分のご褒美として喜びには浸らなかったんですか。

ジェイク ここでざまあ見ろという思いのままずっといたら、その栄光にすがりつかないと俺はやっていけないのか。俺はそれだけじゃないだろ、今から作りあげていくんだろう。チャンピオンになった人たちはなってからが大変だと言う。プロレスはチャンピオンになったあとどういう世界観を見せていくかが大切であって、チャンピオンになったあとのイメージがなかなかできなくてみんなが苦労すると解釈して、次を見なければいけないってなりました。コロナという状況になってみんなが四苦八苦する中でイチ抜けて「こいつはすげえ」「この団体は盛り上がっているな」となるためにはそこを見据えて俺が動かなければと思ったんです。

ベルトを獲ってからが大変だというのは、初めて獲ってその後の防衛活動の中で実感するものですが、ジェイク選手はそれを獲った時点で理解したんですね。

ジェイク そういう話はずっと聞いていたし、その中で苦しむ人たちを見てきて俺だったらこうするというシミュレーションはしていました。もちろん今のように自分がなるというのは想像していなかったので、そこは微調整が必要になってきますけど、本当に微調整だけでやれるんですよ。

本当の意味でベルトがゴールではなく、スタートなんですね。

ジェイク ベルトを持ったあとにプロレスを見ている人たち…ファンや関係者がここからどうする?という目で見ているのをすごく感じる。いや、コケねえよ俺。あんたらが思っているような結果にはならねえよ。そこでまた今に見ていろっていう気持ちになれるんです。

実績をあげてもまだ自分に対する見方への反発心は持ち続けていると。

ジェイク やっぱり僕の場合はそこがないと闘わないんだと思うんです。いろんなものとの闘いだと思うし、その感情があるからこうして闘えると思っているので、そこは生きていく上で大切に持っていたい。一生懸命頑張ろうよとかじゃなく、これをやるとなった時に上に立つ者たちが動力源になる。歴史を築いてきた者だったり今の目線・視線だったりすべてが動力源。

特に三冠ヘビー級というタイトルは長い歴史が紡がれているだけに、動力源となる先人たちが多くいることでしょう。

ジェイク その一方で全日本プロレスって、そうした歴史がすごくある団体にもかかわらず今、この時点でその人たちはどこにも出てこない。分裂したり元に戻ったりの繰り返しで歴史を築いた人たちがここにはいないんです。なんでそうなったかは誰もほじくり返さない部分だけど、そこを見直さないと話にならない部分もあるでしょう。来年は50周年ということで歴史を振り返るタイミングの中、俺は俺のやり方でそういった人たちを呼び覚ますじゃないけど、それに向かって動いていかなければならない。今の俺のキャラクターだからこそ俺にしかできないことだと思うし。

歴史を呼び起こす。

ジェイク 呼び起こすという言い方になるのかは別として、そうだったんだ、こういうこともあったんだというのを欲している人たちもいるだろうし。なのでそういったところにもしっかりアンテナを張っていろいろ動いています。

そこは“プロレス”というよりも“全日本プロレス”を強く意識されているのだと思えます。

ジェイク そうですね。僕はプロレスを見て育ったわけではないので。プロレスに入るというイメージがまったくなかったんです。たまたま重量挙げをやっていてその恩師が諏訪魔と大学時代の先輩後輩の関係で、それがすべてのスタートだった。あれがなかったらプロレスやっていないだろうし、知っているプロレスが全日本プロレスだけなんです。だからこういうふうになっていったんだと思います。

血中全日本濃度が高いですね。

ジェイク だからいろんな団体を見るようにしています。あえて名前を出しますけど新日本、ノア、DDTもひと通り媒体でも見るし会場にもいきますし。

他団体の会場まで足を運んでいるんですか。

ジェイク その方がやっぱり全日本の色だったり歴史だったりがわかるんですよ。その上でどう盛り上げていくか、自分たちが優っているものは何か、自分たちが作り上げてきたものはなんなのかを比較する。その上で自分が何を見せていくかじゃないですか。

全日本プロレスの紡ぎ方というのがちゃんとあるんですね。

ジェイク それが俺なりのやり方。ほかの選手はやらないだろうと思って。

求めているのは対戦相手を
応援することで発生する雰囲気

反体制の立場にありながら、ジェイク選手の口から率先して「50周年」という意識が出てくるところに引っかかりがあったんです。

ジェイク 分裂して合体しての歴史をいつまで続けるんだ? どんだけファンを悲しませるんだ? ただ、その中で振り返らなければならない歴史もあって、自分たちがそういった過去と対峙しなければいけない部分もある。その上で今を作っていかなければいけない。それは反体制だからこそできる。正統な選手だったら現状に対しなんの疑問も持つことなく「今がいいんだからいいじゃない」という調子になるでしょう。今のままで言い訳ねえだろうよ。それが俺のやり方ですよ。

反体制の方が自由ですからね。

ジェイク 思ったことを発言できますよ。当初はなんで好青年なのにとか言われたんですけど、それはあなたたちが作った幻想であって、俺はただみんなの胸の内を代弁しているだけだよということ。それが俺の役割だと思っているんで。これは明言します。「気づかせる」。気づかせた上で何を見せていくんだよって奮い立たせて、その上で俺は先にいくぞということです。俺はこう思ってやっている、おまえらはどうなんだ?

今の全日本の中で自分の考え方と、そこに付随する行動において一歩先をいっているとの確信は持てていますか。

ジェイク あります。一歩って言っていいのかなっていうぐらいですよ。見ている方向がもっともっと先なので。ほかの選手からこういう言葉は出ないと思うんですよ。来年50周年で、その上で自分がどう動いていくか。もちろん今を大切にした上で、そういうコメントを残している選手がいるかといったら…いないんですよ。おまえらが見ているのは目の前の試合だけなのか? なんでもっともっと先を見てモノを言わないんだ? だから俺はどんどん言っていくよ。

そこに関しては独り勝ちですね。

ジェイク 天に向かって指を差すあのポーズは俺にとっての儀式なんですけど、それは「俺はもっともっと上にいってやる。こんなところで終わってたまるか!」という意味合いをこめているんです。

空想の範ちゅうで構わないのですが、何年先まで考えているんですか。

ジェイク ……イメージというなら5年後、10年後を考えていますよ。理想まで含めたら20年後、30年後にこうなればいいなというのを考えるし。節目節目に自分はこうなっている、こうしているという想像ですよね。

30年後はさすがにプレイヤーではないかもしれません。

ジェイク 今、ブラジリアン柔術にハマっていて、毎朝練習にいっているんですよ。30年後は62歳なんですけど、62で黒帯で若造を腕十字決めたらカッコいいよなとかね。そこから広げて、僕のことをああだこうだ言う若造が出てきたら「リング上の闘い? いや、ちょっとな…でもまあ、いっか」とか言って、そいつから一本獲って「若造、まだまだだな。おまえが持っていないものを俺は持っているんだぞ」と言ってやることを想像するのが楽しい。とにかく闘い続けたい。仕事したいし。悠々自適というよりは、何かしらをやっている。

2011年に全日本を退団し、そこで一度は途切れたにもかかわらずずっと闘いたいと思えるようになったんですね。

ジェイク おそらく、途切れたからだと思うんですよ。あの時の後悔を払拭したい。いろんな人が支えて、応援してくれてデビューしたにもかかわらずですよ。死ぬ時に、本当に後悔するのはあそこなんですよ。それを払拭するためにというのが一番の理由なんだと思うんですよね、今やっているのは。そのやっている中で、俺の人生は闘いの連続なんだと気づいたというか、もう逃げられないんだなと。

それはどの段階でしたか。

ジェイク 三冠獲った瞬間でしたね。今、このタイミングで俺が持つのはそういうことなんじゃないかと、自分の中で勝手に作っちゃった。だったらやってやる、死ぬまで闘い続けてやる。何かしらと闘い続けなければならない。

今の時点で払拭自体はできたんですか。

ジェイク うーん、ここまで築き上げはしたものの満足していないんでしょうね、自分自身が。だから、あの当時のことについて逃げなきゃよかったって思う部分はまだあるんです。あれがあったから今の自分を形成できたところがあるんで、後悔の念と感謝の念がフィフティ・フィフティ。だからすごく複雑なんです。

5:5が、後悔の方が3:7、4:6と減っていってはいないんですか。

ジェイク そこは後悔の念が強いから感謝の念も強いという意味で5:5のままですね。だからこの念は消えないんだろうなと思います。でもそれでもいいかな、当時を振り返るのはまだ先であって、とにかく闘い続けようと。

今は観客やファンを突き放すスタンスじゃないですか。宮原健斗選手のように共感を得て一緒に進もうと思うことはないんですか。

ジェイク 全然違いますね。俺の相手はこんなに痛がってんだから、おまえら応援してやれよしかない。

元は応援してもらって嬉しかったのでは?

ジェイク もちろん。自分が相手に投げられた、蹴られた、殴られた時に観客がすごく沸くんですよ。特に投げられた時。僕はほかの選手と比べて大きいので、必然的に相手の方が小さく見える。小さい方が大きいやつを投げるのって、見る側はすごくスッキリする。あの沸く声を毎回聞いていて、そのつどここがポイントなんだって思っていました。観客はその瞬間にエキサイトしている。だったら、おまえらがこいつをもっと応援すればいい。そこの気づきでしたね。

それはNEXTREAM時代のことですか。

ジェイク NEXTREAMをやっていた頃から応援をもらうというのはこんなにも難しいのかというのはあったんですけど、こういうふうに考えられるようになったのは2月から(TOTAL ECLIPSE結成)ですかね。いろんなものを吹っ切って自分の仲間を裏切って、俺に同調しないやつは敵だと自分のユニットを作って、そこからです。

動くとなった時に、ちゃんと思いきりいけたなと映りました。

ジェイク 俺は(それまで組んでいた岩本煌史に対し)おまえもやれよ、ここで動こうぜという感覚だったんです。敵なんだからボコスカやってやろうぜって言ったら、そこで「違う」と言ったんで、その瞬間にスイッチが入って「おまえも敵だ」と。

明快ですね。敵か敵でないかの二択しかない。

ジェイク それぐらいシンプルな方が見ている方もわかりやすいと思います。

動いたことでファンの間で反発もありました。

ジェイク それはもう、メチャクチャありましたよ。

本当なら応援された方がやりやすいし精神衛生上もいいはずなのに、そちらを選ばなかった。

ジェイク みんなが望んでいたのはそっちだったんでしょう。正統派で、みんなの声援を力に変えて「皆さんのおかげで勝てました! ありがとうございます!!」っていうね。俺は無理ですね。俺を応援するんだったら、ほかのやつを応援しろって思っちゃうんですよ。

今、ジェイク・リーやTOTAL ECLIPSEを支持している皆さんは?

ジェイク 対戦相手を応援してあげなさいよ。そこは100-0でいい。俺のことを一人も応援しない方がね。僕が求めているのは、それによって発生する会場の雰囲気なんですよ。

60-40よりも100-0の方が雰囲気的にはすごいものになりますね。

ジェイク そうでしょう。その力によって相手が立ち上がってくる。そうだそうだ、それでいいんだ。もっとやろうぜですよ。そうしたらもっと面白いドラマが作れる。

過程における応援などのリアクションではなく、結果としてどれほどの作品になるかに興味があると。

ジェイク うん、そうかもしれないですね。

人との出逢いも才能であり
ドラマに影響している

あれほどファンの支持によって自分を高めてきた、宮原健斗という人間の間近にいながら真逆にいくというのも面白いですよ。

ジェイク (微笑)真逆にいかないと対等には闘えない。彼がそっちでいくなら俺は逆でいこうというのは、当時から思っていました。宮原健斗に対してはあこがれもなかったし。じゃあなぜ同じユニットになったのかというと、あの時は選手がたくさん離脱して(WRESTLE-1勢)、本当にどうなっちゃうんだろうという状況下で「ここで若い力がいかないと」「なりふり構わずいこうぜ」みたいな感じで、ある意味何も考えていなかったですよ。今のように物事を深く考え、意識することよりもとにかく闘う、組まれた試合に集中するだけで、何かを見せたいとか、このやるべきことをやるとか、そういう姿勢ではなかった。

でも、やっていくうちに自我が芽生えてきたと。まあ、NEXTREAM時代はどんなに激闘をやったあとでも宮原選手の最高劇場が終わるまではリング上で待っていて控室に帰れなかったですから、それを思うとわかる気がします。

ジェイク あれの初代ですから。だいたい試合でやられていたのは俺なんだぞ!ですよ。あの価値観じゃ俺はなかったですね。

ユニットの仲間がいるとしても、最終的にはファンの後ろ盾がなく己の力のみでやっていくことを選択したわけです。

ジェイク 今、それを言われて改めて考えたんですけど…やっぱり、それを欲しいとは思わない自分がいます。何度も言うけど、対戦相手を応援してやれとしか思えない。

それが逆説的に自分の力を引き出すと。

ジェイク ああ、そうですね。ツイッターで俺を応援するツイートを見かけると、本当に俺のやってきていることを見ているの?って思う時があります。結果がすべて、勝った者が正義って言ってきているけど、それってどの世界でもどの時代でも真理であって。ルールを作ってきたやつって勝ってきた、結果を出したやつであるのは歴史が証明している。そうでなかったらどれだけ素晴らしい人間であっても、どれだけ正しいことを言っても廃れていく。俺はそれを、仲間を裏切ってまでやったのに、そこをおまえらは忘れていないかって。それがわかっている上で俺に賞賛を送るならば、送ればいい。

徹底していますね。自分がやったことの評価は他者に委ねられるのが表現者ですが、ジェイク選手はそこに左右されずにいこうとしています。その意味ではアーティスト…芸術家です。リアクションそのものに対し、何も求めていない。

ジェイク ひとことで言っちゃったら「だから?」ですよ、すべてが。どう評価しようが、どうなるか楽しんでおけさえばいいんですよ。俺が言うとしたら、それだけ。

ただ、そこにドラマ性があると見る側は関心を持ってしまいます。たとえば諏訪魔選手との関係もそうですよね。先ほど話に出た過去から続いていて、本当ならばチャンピオン・カーニバルに優勝して諏訪魔選手の持つ三冠に挑戦するはずが、コロナの影響でそれが流れて自分が宮原選手、青柳優馬選手との巴戦を制してチャンピオンになり、今度は自分が王道トーナメント優勝者となった諏訪魔選手の挑戦を受けた。物語を持つ表現者は強いです。

ジェイク 俺は、自分にどんな才能があるか人から聞かれたらまず一番目にはこの体ですって言うけど、それと同じぐらいに恵まれているのが人との出逢いです。それも才能だと思っています。特別勉強ができたわけでも運動神経が並外れてよかったわけでもなかった。逆上がりも開脚前転もできないし、倒立なんて怖くてできなかった。期末テストになったらいっつも最下位で落ちこぼれで。でもそんなやつが今、こういう場に立ってやっているのって、それなりのことをやってきた自負はもちろんありますけど、それ以上にいろんな人と出逢ってそこでの気づきだったり、導きもあったりで今の俺がいる。それはドラマというものにすごく影響していると思います。俺だからこそ描けたストーリーなんですよ。

自分を導いた相手を挑戦者に迎えるなど、まさにドラマの中の世界です。プロレスは、それが描かれる。

ジェイク 本当、そうだと思います。人生って何があるかわからない。たぶん、誰もこんなことを思っていなかった。でも現実としてこうなったということは、人との出逢いという才能に恵まれたんですよ。

偶然ではなく。

ジェイク 自分がその人を引っ張ってくる。逆もしかりで、その人間の才能によってこの俺を引っ張ってくることもこの先あるでしょう。若い世代との出逢いがあることで才能の幅が広がっていく。まあ、それらすべてを物語として形にするだけの回収が大変だけど、それがジェイク・リーとして生きていくための役割であるなら俺はそれをやっていきたい。

あのう、プロレスラーをやる上で意識する存在は他ジャンルでいますか。

ジェイク (即答で)大黒摩季さん。ボディメイクトレーナーをやらせてもらっているんですけど、実は小学生の時に『SLUMDUNK』のエンディング曲である『あなただけを見つめてる』を聴いてから大ファンだったんで、部室でよく流していたんです。じっさいにお会いした時も、今からアーティストとして復帰するので体力を作っていきますというタイミングで、毎回練習して大の字になっていた。いろんな面を知っているんですけど、こういう人ってやっぱりいるんだなって思わせてくれた方で。そういうこともあって何かしらと闘いたいって思えていると思うんですよ。

大黒摩季さんが汗だくになって大の字になっている光景など普通は見られないですよね。

ジェイク ファンの前では大黒摩季の姿を作り上げてステージに上がるんですよ。そういう姿を見ていると自分はまだまだだなって思うし。この前もミュージカルの舞台に出て、五十代になってもまだ初挑戦、初挑戦と続けている。僕の周りにはそういう人がほかにも何人かいるんですけど、一番わかる人ということで今は摩季さんの名前をあげました。プロレスラー以外の人たちの影響、メチャクチャ受けていますよ。ブラジリアン柔術でも、僕のいっているジムの人たちで、全日本選手権に何人かが優勝しているんです。そういう選手とスパーリングをやると、体重差がすごくあるにもかかわらず僕のことをポンポン極めてくる。ジャンルが違うとはいえですけど、こんな世界があるんだって。じっさいに自分の体で体験したらよけいにそれを感じる。でも負けるのは嫌いな性格だからどんどん通い詰めになって、そこで身につけたものがこれはリングで使えるとひらめきに変わる。他ジャンルから受けた影響がプロレスのひらめきに変わる。メンタルだけじゃなくスキルの部分でも、摩季さんだったらオーディエンスの空気を読んで発言したり間を取ったりしている。摩季さんが司令塔であるところを見てなるほどなってなるんです。それも、自分だったらこうするというのを考えちゃうからなんですけど。それはもうクセですから。

わかりました。普通なら、ここは「最後にファンの皆さんへメッセージを」と振るところですが、そういったものはないでしょうから自発的に伝えたいことがありましたらお聞かせください。

ジェイク 僕は、人生とは気づきの連続だと思っています。気づいた上で動くか動かないか。動くとしてもタイミングと、そして勇気が必要だと思っています。これさえしっかり持ち合わせていれば、今のコロナ禍の中でも自分の目指すものに対して突破口が切り拓けると思う。皆さんが思う理想、夢、目標に対し、それらを持って突っ走ってみればいい。